2011 Nonesuch Records
Joshua Redman (ts,ss)
Aaron Parks (p, key)
Matt Penman (b)
Eric Harland (ds)
説明するのも面倒くさくなってくるくらい実績と知名度を持つNYコンテンポラリー系ミュージシャンの4人、すなわちジョシュア・レッドマン、アーロン・パークス、マット・ペンマン、そしてエリック・ハーランドというラインナップによる新ユニット、JAMES FARM のデビュー作。
“ 新 ” ユニットといっても、この4人が初めて組んだのは2009年夏のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのこと。超満員の観客に迎えられ好評を博し、その後も約一年間のツアーを行いながら、2010年8月にスタジオ録音されたのが本作。なお、レコーディング後はいったんツアーを休止していたが、現在、アルバム・リリースに合わせたサポート・ツアーを行っているようだ。
ジョシュア・レッドマン、マット・ペンマン、エリック・ハーランドの3人は、2005年から2007年まで、SF Jazz Collective で同じ釜の飯を食った仲であるし、マット・ペンマンとアーロン・パークスも、お互いの最新作でサポートし合っていて、更にそれらのアルバムにはエリック・ハーランドも参加していた。そんなわけで、お互いに腹のうちは全て知り尽くした間柄で結成したユニットということで、内容がイイことはだいたい予想がつくが、果たしてどんなサウンドが飛び出してくるか、非常に興味が持たれるところ。
収録曲は全10曲ですべてメンバーによるオリジナル。レッドマン、パークス、マット・ペンマンらがそれぞれ3曲、ハーランドが1曲、楽曲を持ち寄って作られた作品だ。彼ら全員が作曲できるというところが強みだね。以前にも書いたことがあるが、今を生き抜くアクチュアルなジャズ・ミュージシャンは作曲力が必須条件になっているよね。昔はベーシストとかドラマーは作曲できなくても楽器が上手ければ仕事にありつけたが、今は演奏力だけではだめだ。オリジナルな楽曲をバンドに提供できないとお声がかからない。特にNYではその傾向が顕著じゃないだろうか。
アルバムは神秘的なメロディーをもつペンマン作の《 Coax 》で幕を開ける。パークスの不安感を煽るリフも、聴き手に何か普通じゃないジャズが聴けそうな予感を抱かせる。続く M-2 《 Polliwog 》は一転して軽快なロック調のレッドマンの自曲。とっても耳に馴染みやすいポップな曲だが、アーロンの印象的なメロディーが不思議と耳に残る。牧歌的で全てを浄化していくようなバラード M-3 《 Bijou 》。中近東エスニックな雰囲気を醸し出しながらも各メンバーの渾身のソロが聴ける M-4 《 Chronos 》・・・と、高揚感と優しさに満ちた楽曲が続いていく。
聴く前は、個性がぶつかり合っているサウンドかと思っていたが、意外にもトータルサウンド重視の落ち着いた雰囲気で、統一感もある。全員がバンドサウンドというものをまず念頭において演奏しているのだろう。十分な技術と豊富な音楽性がバランスがよく拮抗していて、聴いていて何とも心地よい。
やっぱり、こういう行間から沸き上がってくる芳醇な音楽性は、そこらの新人アーティストには絶対真似できないだろうな。一朝一夕にはできない芸風であることがすごくよくわかる。
マット・ペンマン曰く、
"James Farm is where we pool our collective knowledge, let run the best of our ideas arising from our varied musical influences, while acknowledging substantial common ground - a love of jazz, a fascination with song and structure, an obsession with groove, a receptivity to contemporary influences. A band where we can be creative composers and improvisers, in step with the rhythm of the times, constantly evolving....."
みんな集まって知識を集約し、様々な音楽的ルールや経験から沸き上がるアイデアを駆使し、楽曲を作り込む、 JAMES FARM とはそんな場所であるとペンマンは捉えているようだ。
そして、作曲と即興演奏のバランスを保ちながら、自分達を創造的に成長させていける場であるとも考えていて、さらにこのバンドは時代とともに進化し続けていくだろう、と語っている。
これは、文句なくイイ気分にさせてくれるアルバムだ。ただ個人的には、彼らの中の湿っぽい部分にも追及した作品であればよかったのに、と思わないでもないが。
いずれにしても、J ( Joshua ) A ( Aaron ) M ( Matt ) E ( Eric ) s の4人が耕す FARM ( 農場 ) は、いま、はじめての収穫期を迎えたばかりだ。今後、どんな芳醇な収穫物を彼らは手に入れるのだろうか。次の収穫祭が楽しみだ。
ブログ 『 ジャズCDの個人ページBlog 』 の910さんの記事
“James Farm/Joshua Redman, Aaron Parks, Matt Penman, Eric Harland” はこちらから。
http://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2011/06/james-farmjoshu.html
ブログ 『 中年音楽狂日記 』 の中年音楽狂さんの記事 『James Farm:Joshua Redmanが今イチ苦手な私もOKの快作』はこちらから。
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(記事編集) http://jazzlab.blog67.fc2.com/blog-entry-1443.html
2011/06/05 | Comment (12) | Trackback (3) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |こんにちは。
続けて、トラバいたします。
この初めての収穫物は、とても素晴らしい物でした。
収穫祭で、全員で来日してほしいです。
って、きっと、いけないけど。
いけなくても、来てほしいです。
>芳醇な音楽性は、そこらの新人アーティストには絶対真似できないだろうな。一朝一夕にはできない芸風
そうですよねぇ。。
わたし、みんな聴いてみたいんですが、、特にハーランドっを目の前で聴いてみたいです。
スズックさん、こんにちは。
今日の東京は暑くもなく寒くもなくの清々しい一日でしたよ。今、仕事から帰ってきたことろです。
結構早くあがったので、ちょいとブログでも書こうかと思ってます。ジャズじゃないけどね。
これ、聴けば聴くほど、良さがわかってくるアルバムですね。ジョシュアの音、今までと違ってませんか?
重心が低くなって、一音一音の説得力が増しているような気がします。ちょいとクリポタ寄りの音になったような。
いままでジョシュアの音色にはやや不満がありましたが、これならOKです。
ほんと凄いアルバムですね。何度聞いても飽きません。
>わたし、みんな聴いてみたいんですが、、特にハーランドっを目の前で聴いてみたいです。
SF JAZZ でBlue Noteに来た時、ハーランドは観ましたが、席のポジションが悪くて、ハーランドの体が全然見えない席でした。そのかわり、ずっとリニー・ロスネスのお尻をま近に見ることがでいましたが(笑)。
ということで、こちらからもTBさせていただきます。ではでは。
クリスさん、ご無沙汰しています、monakaです。
再び記事がUPされるようになって、心強くかんじます。
さてこのアルバム、アメリカのJAZZのとても進んだところ、良い部分が基本になっていて、アメリカの創造の根元には農場というものがいつもあるのではと思いました。
TBさせていただきますね。
monakaさん、こんばんわ。
ご無沙汰してます。
震災以降、どうもブログに関わる気が起きなくて。
やっと、少しづつ、やる気が湧いてきました。
まだまだリハビリ中ですが。
この盤、聞けば聞くほど新たな発見があり、驚いています。
まず楽曲がしっかり練られているのが強みかと。やっぱり凄い人たちです。
正直、最近のジョシュアには ? だったのですが、ここでのジョシュアは音も太いし、説得力もあり、最高です。
聞くほどに彼らがファームと名付けた理由がわかってくるようです。ファームでは日々、品種改良の実験が行われているかのようです。次作が楽しみですね。
どうも、お久しぶりです。
メンバーがメンバーなので、聴く前は身構えてしまいましたが、全体的には、意外にも聴きやすさが前面に出ていて、これはこれで楽しかったアルバムとなりました。このメンバーなので、こう来たか、といったところです。でも、やっていることはスゴい部分、ありそうですね。
FC2ブログには最近はほぼTB入らないので当方のブログアドレスを掲載しておきます。
http://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2011/06/james-farmjoshu.html
910さん、お久しぶりです。
あまりにも聴きやすくてすぐ飽きそうな気が最初はしてましたが、でも良くできているのは確かです。もう少し、複雑な曲も入れてほしかったような気もしないでもないけど、、、。全員が猫の皮をかぶって演奏しているような感じで、若干物足りないかな。
ということで、こちらからもTBさせていただきます。
こんにちは。いろいろなところにコメントさせて頂いていますが,私はJoshuaが苦手です(爆)。知性が音楽の邪魔をすると言っては言い過ぎですが,ミュージシャンらしい「ぐわぁ~」とした感覚が足りないように思えるんですよねぇ。
しかし,このアルバムはメンツのよさにも助けられて,いい感じのアルバムになっていたと思います。
ということで,いつものようにTBを試みますが,多分ダメでしょう(笑)。
中年音楽狂さん、こんばんわ。
僕もジョシュアはもろ手を挙げて好きだーというわけではありません。ちょっと考え過ぎのアルバムも多い気がします。
僕的にはエラスティックバンドが一番好きかな。
アルバム・コンセプトがジョシュアの個性とうまくマッチした時の彼の実力は凄いものがあります。
ということで、TBさせていただきます。
これいい作品ですね。ジョシュア・レッドマンの音の推進力は依然として健在ですね。ますます磨きがかかっていますね。かっこいいユニットです。生、みたいですね。メンバーのこと貴兄の記事でよくわかりました。とても参考になりました。
多分、無理だと思いますがトラバしますね。
kumacさん、お久しぶりです。
すでにたくさんのTBがついていますね。
それだけみんなが注目している作品なのですね。
こちらからもTBさせていただきます。
でも、これ、DownBeat ではあまり評価が高くなかったんですよね。確かにちょっと軽い作品ではありますから、シリアス好きなDBの評論家にはウケがよくなかったのでしょう。
クリスさん、御無沙汰しております。
今月号のSwitchがJAZZ特集で、ジョシュア・レッドマンと平野啓一郎の対談を掲載しています。
当方、震災以降新作を買わなくなってましたが、最近ぼちぼち購入し始めました。今は、Jacob Karlzon、Per Danielsson、Claes Andersson、Josef Vejvoda、Max Ionataの入荷待ちです。
最近の御奨めがあれば教えてください。ではでは。
Martyさん、こんばんわ。
いつもジャズに関する書籍関連の情報、ありがとうございます。Switchでジャズ特集をやるとは知りませんでした。Switchは結構好きな雑誌ですが、最後に買ったのが3.11直後の「世界を変えた3日間、それぞれの記録」かな。細野氏の記録が良かったなぁ。さっそく明日本屋を覗いてみます。
震災後、僕もあまりジャズは聴いていないんですよ。もっぱら昔聴いたロックのアルバムを引っ張り出して聴いています。70年代から80年代の音楽は当時を風景やその時何を思って生活していたかなど、様々なことをあらためて想起させてくれます。
このところ頻繁に聴いているのは、マルチン・ボシレウスキのECM三枚目の「Faithful」ぐらいかな。近いうちにアップしよと思ってますが。
では、また。
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Joshua redman『James Farm』
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