雨の日にはジャズを聴きながら90年代以降のジャズを気ままに綴っています。 旧ブログ 『 雨の日には JAZZ を聴きながら 』 からのデータ移行は終了しました。ジャズ以外にも、時々デジタル関連の物欲記事、最近ハマっているカメラの話題も少しアップしています。 

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Silje Nergaard / A Thousand True Stories

   ↑  2010/05/31 (月)  カテゴリー: vocal
silje nergaad_thousand.jpg
Silje Nerdaard / A Thousand True Stories ( Tower Reocrds )
2009 Columnia

Silje Nergaard (vo)
Helge Lien (p)
Finn Guttormsen (b)
Jarle Vespestad (ds)
Mathias Eick (tp)
Metropole Orchestra Strings
Conducted and arranged by Vince Mendoza



ノルウェーを代表するジャズ&ポップス・ヴォーカリスト、セリア・ネルゴード (   Silje Nergaard , Steinkjer, 1966~ ) の最新作は、ヴィンス・メンドゥーサ率いるメトロポール・オーケストラ ( The Metropole Orchestra )との共演盤。

セリアは1990年にパット・メセニーの後押しを受けて『 Tell Me Where You're Going 』 でデビュー。当初はフォーキーで透明感のある北欧ポップス系のスタイルで売っていたがいまひとつパッとしなかったため、2000年に起死回生を狙って純ジャズ作品『 Port of Call 』( 前項あり ) を発表。これが大当たりして一躍有名となった。その後もコンスタントにアルバムを制作しているが、近年は再びポップス色を強めている。

一方のメトロポール・オーケストラは1945年創立のオランダを代表するビッグバンドで、世界で唯一、ストリングス・セクションをもつ総勢60人からなる巨大アンサンブル集団である。ジャズはもとより、民族音楽からポップス、果てはヘヴィ・メタルまで幅広いレパートリーをもち、今までにエラ・フィッツジェラルド、ハンク・ジョーンズ、スタン・ゲッツ、ハービー・ハンコック、ジノ・ヴァネリ、ブライアン・イーノ、エルビス・コステロ、スティーヴ・ヴァイなど、世界的に有名な多くのアーティストと共演を果たしている。近年の活動の中では、昨年リリースされたイヴァン・リンスとの共演盤 『 Ivan Lins & The Metropole Orchestra 』 がラテン・グラミー賞の《 Best Brasilian Album 》 賞を受賞して話題となった。ヴィンス・メンドゥーサは90年代半ばから同オーケストラとしばしば活動を共にしてきたが、2005年には常任指揮者&音楽監督の座についている。

さて内容だが、全9曲収録されており、すべてセリアの作曲である。そしてマイク・マガークという作詞家が詩を書いているのは前作と変わらない。メトロポール・オーケストラのサポートしているが今回はそのストリングス・セクションのみの参加だ。

曲想としてはやはり前作を踏襲するようなポップな作りで、ジャズ色は薄い。もともとスウェディッシュ・ポップ畑の歌い手だが、前作ぐらいから再びその色合いを強めてきているようだ。ただ理屈抜きに彼女の歌声に惚れてしまっている僕としては、聴いているうちにジャズか否かはどうでもよくなってくる。

その彼女のチャーミングで切ない歌声を、極上の弦楽器が幾重にも重なりありながら静かにエモーショナルに包みこんでいく。更には要所要所でヘルゲ・リエンの鳥肌モノのソロが挿入される。至福の音世界。それにしても彼女のソングライティング力は大したものだ。デビュー以来ずっと作曲は自らが行っているが、曲自体の求心力が圧倒的に強いので、どんなフォーマットでどんな企画で演奏されてもその魅力は変わらない。ということで、本盤はセジル・ストームの『 Swedish Lullaby 』以来のヴォーカルの愛聴盤になりそうだ。


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2010/05/31 | Comment (8) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Peter Asplund / Asplund Meets Bernstein

   ↑  2010/05/29 (土)  カテゴリー: trumpet
peter asplund_bernstein
Peter Asplund / Asplund Meets Bernstein ( amazon )
2010 PROPHONE PCD103

Peter Asplund (tp)
Jacob Karlzon (p)
Hans Andersson (b)
Johan Lofcrantz (ds)
Dalasinfonietten ( orchestra )
Conducted by Mats Halling




素晴らしい出来映えの前作『 As Knights Concur』( 前項あり ) から2年ぶりとなるスウェーデン出身のトランペッター、ピーター・アスプランド ( Peter Asplund , 1969~ ) の最新作がリリースされた。通算6作目となる今作は母国スウェーデンの交響楽団 Dalasinfoniettan との共演によるレナード・バーンスタイン集。

アスプランドは2000年に彼の最大のアイドルであるルイ・アームストロングへのオマージュ作品『 Satch As Such 』(前項あり ) をビッグバンド編成で制作しているが、ラージ・アンサンブル作品としてはそのサッチモ集以来10年ぶりである。しかもクラシックの交響楽団との共演は今回が初めて。難しい題材ではあるが、一作ごとにその実力を高めてきたアスプランドだけに大変楽しみな作品だ。

レナード・バーンスタイン ( Leonard Bernstein, 1918-1990 ) 。言うまでもなくカラヤンと並んで20世紀に君臨した偉大なるアメリカの音楽家である。なにかとカラヤンと比較されるが、バーンスタインはカラヤンと違い、指揮者であると同時に作曲家としても活動したことで有名だ。僕はクラシックに疎いのでバーンスタインと聞いて『 ウェスト・サイド物語 』ぐらいしか思い浮かばないが、他にも知られざる名曲を数多く残しているらしい。生前バーンスタインは、自分を『 ウェスト・サイド物語 』の作曲家としてだけで記憶されるのを嫌っていたと言われる。それだけ『 ウェスト・サイド物語 』だけが独り歩きし、有名になってしまったということだろうが、近年、クラシック界でも作曲家バーンスタインを再評価していこうという機運が高まっている。

ジャズ界に目を向けてみると、古くはオスカー・ピーターソンやアンドレ・プレヴィン、近年ではアンドレ・チェカレリやリッチー・コールらが 『 ウェスト・サイド物語 』 というそのまんまのタイトルで作品を制作しているが、バーンスタイン集として一枚まるまる彼のミュージカル曲集を作ったのはビル・チャーラップの『 Somewhere 』 ( 2004 Blue Note ) ぐらいしか思い浮かばない。まあ、僕が知らないだけかもしれないが、いずれにしてもジャズでバーンスタインをカヴァすることは珍しいことだろう。多くのジャズ・ミュージシャンが取り上げるガーシュウィンに比べると、バーンスタインの楽曲はおそらくコード進行がジャズ化しにくいことがその原因かもしれない。

全9曲ですべてバーンスタインの楽曲。ほとんどがミュージカル・チューン。『 ウェスト・サイド物語 』から《 I Feel Pretty 》、《 Somewhere 》、《 Tonight 》。『 キャンディード 』 から《 Glitter And Be Gay 》、《 It Must Be So》。『 ワンダフル・タウン 』から《 It's Love 》、《 Neverland 》。『 オン・ザ・タウン 』から《 Some Other Time 》 。そして、冒頭に配された《 A Simple Song 》 のみバーンスタインが書いたミサ曲、という構成。

冒頭曲 《 A Simple Song 》。ティンパニのクレッシェンドと、その直後の金管の炸裂音で大抵のジャズファンは尻込みしてしまうだろうが、そのあとは比較的静かな展開が続く。繊細なストリングスの導入部から優しくエレガントなフリューゲルの旋律が浮かび上がってくる《 Some Other Time 》。ピアノのヤコブ・カールゾンが透明感を淡く湛えたソロがあまりにも美しい《 I Feel Pretty 》や《 Somewhere 》。ゆったりと疾走する牧歌的リズムに乗って、アスプランドが爽やかなソロを繰り広げる《 Tonight 》、などなど。聴きどころ満載。聴く前はクラシックに軸足を置いたバーンスタイン集なのだろうと予想していたが、意外にジャズとのミククチャー感が絶妙で、クラシック独特の仰々しさが(一部を除き ) 気にならない。

ところで、オリジナルを尊び、アレンジやカヴァを評価しない風潮があるクラシック・ファンの眼には本作はどう映るのだろうか。興味深いところが、でも本作は優れたアレンジで原曲の隠れた魅力を引き出すことに成功していると思う(原曲を知らないものも多いけど(^_^;) ) し、バーンスタインに音楽への深い理解と敬意に満ちた作品であると僕は信じたい。




 中年音楽狂さんの記事 『 Peter Asplund:オーケストラとの共演でBernsteinに挑んだ大作 』 はこちら

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2010/05/29 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Alex Levin Trio / Night and Distance

   ↑  2010/05/28 (金)  カテゴリー: piano
alex levin.jpg
Alex Levin Trio / Night and Distance ( amazon )
2005 Independent Production
 
alex levin (p)
diallo house (b)
yoshi wakti (b)
ismail lawal (ds)
taylor davis (ds)





ニューヨークのクラブを中心に活躍しているピアニスト、アレックス・レヴィン ( Alex Levin ) の2005年にリリースされたデビュー作。プロのピアニストとして彼を見た場合、あまりにも凡庸で見劣りするし、この技量で本当にニューヨークでやっていけるのかと心配になるくらい、オリジナリティーに欠けるのですが、これがなんとも心地よいピアノなのです。発売後5年。ひっそりと聴き続けている作品です。

もしも僕が、プロのピアニストではなく、あくまでアマチュアとしてピアノが弾けるとしたら、アレックスのようなピアノを弾きたい、と思わせるような魅力を持っています。彼が副業として時々、小さなクラブでピアノを弾いているとしたら、なんと幸せなやつだろうと羨ましく思うことでしょう。でも彼はどうもピアノ弾きを本業としているようです。やっぱりプロとしては微妙かな。

そんな彼の三作目となる新作がリリースされるようです。タイトルは『 New York Portrait 』。彼のウェブサイトで試聴できますが、なんだか元気良過ぎで翳りがなくなってしまったようです。ちょっと魅力半減かな。

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2010/05/28 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Jazz Masters Series / Mel Lewis & Jazz Orchestra [DVD]

   ↑  2010/05/28 (金)  カテゴリー: large ensemble
mel lews
Jazz Masters Series: Mel Lewis & Jazz Orchestra [DVD] ( amazon )
1982 Adler Enterprises [ VHS ] 2005 [ DVD ]
 

Mel Lewis (ds), Earl Gardner, Tom Harrell, Joe Mosello, John Marshall (tp), John Mosca, Ed Neumeister, Earl mcIntyre, Doug Purviance (tb), Stephany Fauber (frh), Dick Oats, Kenny Garrett, Joe Lovano, Gary Bribeck, Gary Smlyan (sax), Jim McNeely (p), Dennis Irwin (b)









先日拙ブログで取り上げたアーメン・ドネリアンのセクステットのメンバーとして名を連ねていたディック・オーツ ( Dick Oatts, Iowa ) はあまり馴染みのないサックス奏者ですが、70年代末よりサド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ のリードアルトとして活躍し、現在もサドメルの後継ビッグバンドであるヴァンガード・ジャズ・オーケストラでアーティスティック・ディレクターとして同バンドの音楽的主軸として活躍している名手です。コンボ好きの日本人にはいまひとつ認知されていないのが残念なのですが、実はかなり巧い吹き手であります。そんなオーツの貴重な映像が収められているのがこのメル・ルイス・ジャズ・オーケストラのDVDです。


本盤は1982年のスミソニアンセンターでの実況盤で、当時、『 Jazz at the Smithsonian 』というタイトルでVHDで発売された作品のDVD再発盤です。さすがに時代を感じさせる古臭い映像と音響ですが、しかしそれを補って余りある素晴らしい演奏が聴ける名盤です。しかもこの時代のメル・ルイス・オーケストラのLPは現在ではほとんどが入手困難でCD化もされていないので貴重な映像作品ともいえます。さらにはメンバーがとっても魅力的です。リードアルトのディック・オーツを筆頭に、ジョー・ロバーノやケニー・ギャレット、それから馬鹿テクバリサクのゲイリースマリアンらによるサックス陣営。リード・トロンボーンには名手ジョン・モスカ。トランペットにはトム・ハレルもいます。リズムセクションも2008年に惜しくも癌で他界したベーシスト、デニス・アーヴィンと現ヴァンガード・ジャズ・オーケストラで Composer in Residence として活躍中のジム・マクニーリーが参加しています。

ディック・オーツとは当時師弟関係にあったケニー・ギャレットの存在が目を引きますが、当時はまだOTB加入前ですから、その意味でもすごく貴重です。当然ですが当時はやはりギャレットよりもオーツの方が数段アドリブが巧いです。それからトム・ハレルの若かりしその姿も見られますので、トムのファンにもマスト・アイテムかと思います。え~、ず~とうつむいています、彼。メンバー紹介でも、じっと地面を見ています。トランペット・パートがない場面で、他のトランペッターが愛嬌たっぷりに踊っているのに、トムだけ、ず~とうつむいたままです。まあ、ぜひ、見てください。

収録曲は全4曲で曲間にメル・ルイスのインタビューが入ります。4曲中3曲はハービー・ハンコックの楽曲で、アレンジはボブ・ミュンツァー。サド・ジョーンズが抜けてからはアレンジをボブ・ミュンツァーやボブ・ブルックマイヤーらなどにアウトソーシングしていたため、この頃のメル・ルイスのバンドはとっても現代的でカッコよく、垢ぬけた印象を受けます。今聴いてもほとんど古臭さを感じません。CDなどの音媒体に比べてDVDやLDなどの映像媒体はどうしても飽きやすのですが、本盤は意外に飽きずにときどき思い出したように聴きたくなる作品です。


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2010/05/28 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Armen Donelian / Secrets

   ↑  2010/05/25 (火)  カテゴリー: piano
Armen Donelian_secrets
Armen Donelian / Secrets ( amazon )
1988 Sunnyside


Armen Donelian (p)
Dick Oatts (ss,ts)
Barry Danielian (tp)
Anthony Cox (b)
Bill Stewart (ds)
Arto Tunçboyaciyan (perc)



アーメン・ドネリアン (Armen Donelian, NYC, 1950~ ) のレア盤『 Trio '87 』 ( 1988 Odin ) が再発されましたね。そろそろ店頭に並んでいる頃でしょうか。僕も先ほどHMVで注文したところです。

ただ、「お取り寄せ - 通常ご注文後 8-13日以内に入荷予定 」 の表示になっていたのがちょっと心配。果たして予定通りに出荷されるかどうか。数週間、いや数カ月待たされた挙句の果てに「入手困難」、「廃盤キャンセル」なんてことにならないとも限らない。そこがHMVの恐いところです。一時期は予定出荷日を過ぎたCDはその時点でキャンセルするようにしているのですが、そうすると殆どのCDをキャンセルするはめになり、結局、気長に待つ以外ないのかと最近は諦めてますが。それにHMVで手に入らず、Disk Union でも在庫切れの場合でも、最悪 iTunes Store からダウンロードできるので安心。しかも1350円だし。

レア盤というと最近はネガティブなイメージで見られることもありますが、この 『 Trio '87 』 は正真正銘の名盤、だというネット上での噂。とある信頼するブロガーさんも太鼓判を押してましたので期待できそうです。

と云う訳で、注文も済ませたので久しぶりにドネリアンの旧作でも聴いてみようと棚から『 Secrets 』( 1988 ) と 『 The Wayfarer 』( 1990 ) を引っ張り出してきました。ともに Sunnyside の作品で、セクステット編成。メンバーも同一で、フロントがマーカス・ミラーのバンドにも参加していたトランペッター、バリー・ダニエリアン ( Barry Danielian ) とサド=メル BBで活躍していたビッグバンド・ファンにはお馴染みの名手ディック・オーツ ( Dick Oatts ) の二人。ディック・オーツは大抵アルトを吹くことが多いのですが、ここではソプラノとテナーを吹いています。ちなみに、バリー・ダニエリアン は主役のアーメン・ドネリアンと名字がよく似ていますが全くの無関係です。

でもって、ドラマーがなんと天才ビル・スチュアート。当時はまだ20代前半のビルスチュ。しかしながら自己のスタイルは既に完成の域に達しており、終始、最後列からフロントをプッシュしまくっています。おそらく当時ビルスチュはまだほとんどレコーディングはしていなかった時期だと思われるので、その意味でも貴重な作品です。

主役のアーメン・ドネリアンはもともとはアルメニア共和国の生まれ。名前のアーメンはアルメニアに由来するらしい。幼少期からクラシックを学び、15歳でジャズに開眼。コロンビア大学に進学し学士号を取得し、リッチー・バイラークにも師事している。1975年にモンゴ・サンタマリアのグループで音楽デビューを飾り、その後はソニー・ロリンズ、パキート・デリヴェラ、チェット・ベイカーらのバンドメンバーとして名声を得ている。一方でマンハッタン音楽院やウイリアム・パターソン大学で教鞭も執る教育者としても有名。イヤートレーニング関連の著書も出していて『 インプロビゼーションのためのイヤートレーニング 』 という著書もある。

ドネリアンは日本ではあまり知名度は高くありませんが、1980年にAtlasから 『 Stargazer 』 という国内盤がリリースされ一時期話題になりました。髭をはやして眼光鋭いそのポートレイトをあしらったジャケットが印象的で、40代以降のジャズファンならきっと覚えているはずです。

さすがに大学で教鞭を執るだけあって、奏でる音列が理路整然とした印象を受けます。強い個性は見られませんが知的で現代的で都会的です。彼のオリジナル曲もなかなか凝った構造をしていて、むしろ彼の個性はピアノの奏法よりも作曲において発揮されているようです。幼少期からクラシックやジャズと並列して、トルコやギリシャなどの音楽にも接していたこともあり、彼の楽曲には仄かなエスノ風味が漂うっているのも特徴です。

メンバーの演奏も魅力的で、特にディック・オーツの熱いテナーには惚れ惚れします。アルトを持った時と基本的には変わらないスタイルで、盛り上がってくるとファズトーン気味の割れた音で激しくブローするスタイルは、ちょうとケニー・ギャレットに似ています。な~んて書くと誤解されますが、実はディック・オーツがケニー・ギャレットに似ているのではなく、ギャレットがオーツに似ている訳ですね。オーツがギャレットの師匠なのですから。

もちろんビルスチュも絶好調で、一時として同じリズムを刻まない姿勢、常にウネりながらグルーブし、曲を前へ前へとグイグイ引っ張っていくドラミングには圧倒されます。

今回再発される『 Trio '87 』はもちろん素晴らしいのでしょうが、僕個人的にはこのセクステットの二作や一連のソロ作品も捨てがたい作品だと思って愛聴しています。機会があればぜひ御一聴を。


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2010/05/25 | Comment (6) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Agnar Mar Magnusson Trio / Kvika

   ↑  2010/05/24 (月)  カテゴリー: piano
agnar mar magnusson
Agnar Mar Magnusson Trio / Kvika ( amazon )
2010 Dimma


Agnar Magnusson (p)
Ben Street (b)
Bill Stewart (ds)







先月、火山の噴火で大騒ぎしたアイスランド出身のアグナー・マー・マグヌッソン ( Agnar Mar Magnusson ) の最新作。マグヌッソンはアムステルダム音楽院で学んだのちに、ラリー・ゴールディングスの勧めでニューヨークに渡り、現在は米国で活躍しているピアニスト兼オルガニスト。

本作は 『01 』 ( 2001, FSNT )、 『 Lao 』 ( 2007, Dimma ) に続くトリオ作品としては三作目となる作品。サポート・メンバーにはデビュー作 『01 』 にも参加していたベン・ストリートとビル・スチュアートというニューヨークきっての辣腕リズム隊を擁しており、これで駄作だったら言い逃れできないある意味、究極のプレッシャーを自らに課した人選と言えるだろう。

全9曲すべてがマグヌッソンのオリジナル。本作は2008年にアイスランドの首都レイキャヴィークで開催されたフェスティバルでの実況録音だが、収録曲はそのフェスティバルのためにに書き下ろした楽曲だ。そのため、前2作品には収録されていなかったような4 ビートのノリの良い曲も含まれてたライブ用の選曲となっている。

全編を通して非常に透徹な響きをもったジャズである。喩えるならECM的であり、中世王宮神殿の大理石の廊下を裸足で歩いているかのような肌触りだ。アイスランド出身だからといって「氷のようなピアノ・トリオ」と揶揄するのはあまりにも芸がないが、でもやっぱりこの冷徹で静謐な響きは氷の世界、アイスランドを否応なしに想起させる。

ところで、この種の徹底的に自己抑制を効かせたジャズを楽しむためにはそのリスニング環境にも配慮しなければならない。台所からは妻が夕食の支度をする音が聞こえ、リビングからは子供が仮面ライダーWを見ながら飛び跳ねる音が聞こえるような劣悪な環境では、マグヌッソンの音楽をきちんと享楽することはできない。やはり深夜、家族の寝静まった頃にあらゆるノイズを排除して彼の音楽に対峙しないといけない。そのようなリスニング環境され手に入れられるのなら、陶酔感とトリップ感を体感することは比較的容易なことだろう。

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2010/05/24 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Stephen Anderson Trio / Nation Degeneration

   ↑  2010/05/23 (日)  カテゴリー: piano
Stephen Anderson_Nation Degeneration.jpg
Stephen Anderson Trio / Nation Degeneration ( amazon )
2010 Summit Records


Stephen Anderson (p)
Jeffry Eckels (b)
Ross Pederson (ds)
Andrew Van Tassel(as M-3,4,7)





現在、ノースカロライナ大学のジャズ科の教授でもあるピアニスト兼作曲家のステファン・アンダーソン ( Stephen Anderson ) による最新作。2008年のデビュー作 『 Forget Not 』 に続くセカンド・アルバム。

彼は米国大学ビッグバンド界の名門、ノース・テキサス大学のOne O’ Clock Lab Band や Two O’clock Lab band に在籍していた経歴を持つが、今作のメンバーも同大学の卒業生である。3曲でアルトサックスのアンドリュー・フォン・タッセルが参加しているが、彼はアンダーソンが教授と務めるノース・カロライナ大学の生徒だ。

全9曲ですべてアンダーソンのオリジナル。硬質で切れ味鋭いリズミックな楽曲が並ぶ。彼はジャズのピアニストとしてライブ活動などを行う一方で、クラシックの作曲も行い、大学のオーケストラに楽曲を提供している。そんなバックグラウンドもあるためジャズのオリジナルにもクラシック的な重厚なハーモニーが頻繁に見られる。時に左手の重低音のバッキングはやや非ジャズ的に響くかもしれない。そして、モーダルで鋭角的、ときにパーカッシブに鍵盤を強打するあたりはハービー・ハンコックやマッコイ・タイナーあたりを連想させる。

ベースとドラムスの技量もなかなか高く、コンビネーションも抜群で息の合ったところをみせてくれる。随所のキメもカッコよく決まり気持ちがイイ。

あまり期待をしないで聴いてみたが、なかなか面白かった。彼らの限界もなんとなく感じながらも、それでも最後まで聴かせるだけの十分な魅力が詰まっているアルバムではないか。


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2010/05/23 | Comment (4) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Adrian Frey / No Flags

   ↑  2010/05/20 (木)  カテゴリー: piano
ADRIAN FREY_no flags.jpg
Adrian Frey / No Flags ( amazon )
2010 Unit Records


Adrian Frey (p)
Patrick Sommer (b)
Tony Renold (ds)






スイス出身のベテラン・ピアニスト、エイドリアン・フレイ ( Adrian Frey, zurich, 1959~ ) の通算7作目となる最新作。ピアノトリオとしては2001年の『 Sign』以来9年ぶりとなる。

一般的なジャズファンには殆ど認知さいれていないフレイだが、熱心な廃盤マニアの間では、Altrisuoni 盤『 Sign 』と Unit Records 盤『 Trio 』で話題になったマイナー・ピアニスト。特に『 Trio 』は中古市場で6,000 ~10,000円ぐらいで取引されていた人気盤だった。現在は両者ともめでたく再発されたので、通常値段で手に入る。とは云っても店頭在庫はないかもしれないが。この手のCDは再発されてもすぐに店頭から姿をけすから油断禁物。

フレイは地元のチューリッヒ音楽院でジャズ・ピアノを学んだのち渡米し、ボストンのニューイングランド音楽院でラン・ブレイク、ジョージ・ラッセル、ジェリー・バーガンジーという巨匠達に師事。現在はチューリッヒを拠点に活動する一方で、チューリッヒ芸術大学で教鞭もとっている。


全10曲で1曲を除きすべてフレイのオリジナル。乱暴に言いきってしまうと、大同小異な欧州抒情派ピアノ。やや筆圧が弱く線が細い印象を受け(録音のせいかもしれない)、また高速フレーズで一音一音の粒立ちが曖昧になるあたりが、いかにもローカル・ピアニストらしくて、かえってマニア心をくすぐる。ラテン・フレイバー漂う曲想も織り込みながら随所に美メロもふんだんに投入されているが、決して聴きやすいだけの軟体ピアニストではない。変則変拍子のタイトル曲《 No Flags 》 やプログレにありがちなテーマ・リフをもったM-5《 Mba Mba》など、硬質でコンテンポラリー度高めの曲も演奏している。このあたりの緩急軟硬、自由自在のアルバム作りは1995年の『 Trio 』あたりにも見られが、なかなか聴きごたえがあり、ヨロシイ。

同郷のティエリー・ラングともスタイル的には似ているか。あるいはラテン系のリズムにリリカルな旋律を乗せるあたりはトーマス・クラウセンやイヴァン・パドゥアあたりを彷彿とさせる。そのあたりが好きな方は受け入れられるピアニストだと思う。


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2010/05/20 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Aydin Esen Trio / Aydin Esen

   ↑  2010/05/19 (水)  カテゴリー: piano
aydin esen.jpg
Aydin Esen Trio / Aydin Esen ( amazon )
1990 JMS ( Jean Marie Salhani ) re-issue 2010


Aydin Esen (p)
Peter Herbert (b)
Selahattin C. Kozlu (ds)






例のMoonksレア本に掲載された超高額取引物件アイデン・エッセン ( Aydin Esen , Istanbul, 1962~ ) の『 Aydin Esen 』が再発された。レア本に掲載されているオリジナル・ジャケットはまるで場末の居酒屋で見かける売れない演歌歌手のポスターみたいで閉口してしまったが、今回の再発では嬉しいことにアートワークは新装されている。決して良いデザインとは云えないがオリジナルよりはマシだろう。

エッセンはトルコ出身のピアニスト。レア本でしか見たことないという方も多いと思うが、1980年代から活躍し、リーダー作だけでも既に10枚以上リリースしているベテランだ。デイヴ・リーブマンやウォルフガング・ムースピールらの作品などに参加しているのでコアなファンは既知かもしれない。僕個人的にはダニエル・ユメールのLabel Bleu 盤『 Edges 』での彼の演奏が忘れ難い。フロントにジェリー・バーガンジーを据え、ベースがミロスラフ・ヴィトウス、ドラムスがもちろんダニエル・ユメールというメンバーによる文字通りエッジの効いた鋭い演奏で、もしかするとバーガンジーのベスト・パフォーマンスかもしれないくらい出来の良い作品なのだが、そこで弾いていたのが実はこのエッセンだった。

簡単に経歴を記しておく。アイデン・エッセンは1962年イスタンブールに生まれた。ミュージシャンであった父親からピアノを習い始めたのはなんと2歳の時。数年後にはイスタンブール音楽院でピアノと作曲法を学んでいる。1980年初頭にはイスタンブールを離れ、オスロにあるノルウェー国立音楽アカデミーに留学。1983年には全額給与の奨学金を得てバークリー音楽大学へ入学し、通常は4年かけて習得するプログラムをわずか1年で終了し、しかも最高位賞である Artist Diploma で卒業している。その後、ニューイングランド音楽院で修士学位を取得し、1987年にはニューヨークに移住し多くのトップ・ミュージシャンらと共演を果たす。同年、タイガー大越、ミロスラフ・ヴィトウス、ボブ・モーゼス、ボブ・ミュンツァーらとともに来日公演も行っている。現在はニューヨーク、パリ、イスタンブールを行き来しながら国際的に活躍しているようである。

Moonksレア本掲載作品が次々と再発され、そのたびに期待を膨らませて買ってみるのだが、総じて期待外れに終わるものが多い。確かに「レア盤」「廃盤」とは謳っているが、決して「名盤」とは謳っていないところがミソ。偽りはないのだ。これじゃJAROに通報もできない。巧くできたタイトルなのだ。しかも僕らジャズファンはこの「レア盤」「廃盤」の文字に滅法弱い生き物なのだ。どうせ出来が悪くてすぐに廃盤になったからレア化したんだ、と頭じゃ分かっているにもかかわらず、つい買ってしまうのだ。

そんなわけで、Moonks と Disk Union が結託して仕組んだ陥穽にまんまと落ちてしまい、枕を涙で濡らす日々も少なからず経験した僕ではあるが、今回だけは大丈夫。買って大正解。これは素晴らしい作品だった。

全10曲で、すべてエッセンの自曲。一曲だけSE的にシンセを用いているがそれ以外はすべて生ピアノによる演奏。感性豊かな鋭角的抒情派路線といってよいだろう。技術的には日の打ちどころがなく、堂々とした演奏だ。エヴァンスをベースに、チック・コリアやハービー・ハンコックらの生み出した技法をも取り入れ、完全に血肉化した上で、彼独自の世界観を提示している。これほどまでに素晴らしいテクニックを持っているのも関わらず、日本での認知度が限りなくゼロに近いことが信じられない。もっともっと多くのファンに聴かれてしかるべきピアニストだと思う。圧倒的な輝きを帯びた鋭いフレーズに対するドラムスとベースの即時反応も素晴らしい。ピアニストだけが突出しているのではなく、三人が技術的にも音楽的にも同一地平線に立っているからこそこのような素晴らしい作品が生まれるのだろう。

聴く前はどうせ同大小異な類形型のローカル・マイナー・ピアニストだろうと高をくくっていたが、嬉しい誤算だった。大枚を叩いてオリジナル盤を買うのはもったいないが、この再発盤なら買って損は決してないと思う、よ。


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ジャズ専門誌の老舗 『 スイングジャーナル ( Swing Journal ) 』 がついに休刊 

   ↑  2010/05/18 (火)  カテゴリー: book

ジャズ専門誌『スイングジャーナル』が、6月19日発売の7月号で休刊することがわかった。発行元のスイングジャーナル社(東京)によると、レコード業界の不振で広告収入が落ち込んだため。創刊は1947年で、最盛期の70、80年代は約30万部を発行したが、近年は部数が減少していたという。同社は「復刊の可能性を模索する」としている。同社発行の月刊音楽誌「アドリブ」も5月号で休刊している。( 2010年5月17日23時6分 asahi.com )




まさか『スイングジャーナル』が休刊に追い込まれるとは...。スイングジャーナル社の二大定期刊行誌の一つ『 アドリブ 』がつい先日休刊となったばかりだが、流石に社名を掲げる『スイングジャーナル』だけは死守するだろうと楽観視していたのだが、やっぱりだめだっかた。

休刊の原因としては、「広告収入の減少」と「部数低迷」を挙げているが、これらは不況による出版業界全体の問題であり、同社に限ったことではない。問題なのは、同誌が他の出版物に比べ広告収入への依存度が桁外れに高かったことと、内容的にみてもアップデイトされない古いジャズ・ジャイアントの特集と保守的な新譜論評で埋められた紙面作りが長年続き、マンネリ化してしまっていたことではないだろうか。

音楽情報はネットから得て、CDの購入は通販業者から買うか音楽配信で済ませてしまうスタイルが一般化した現在では、もはや音楽誌やリアル店舗はその存在価値をなくしてしまっているのではないか。リアル店舗でのCD販売が落ち込み、レコード会社の業績が悪化すれば当然広告費を削減しなければならず、広告収入に大きく依存していた同社にとっては多大なる打撃だったようだ。

スポンサーとなってくれるレーベルを贔屓してゴールドディスクとか何とか賞などを与えたり、必死にタイアップ記事を掲載したりする一方で、広告を打たないレーベルは完全に黙殺するという、およそ評論誌とは思えぬ理念(そもそも理念などないのだろうが)につくづく辟易してしまっていたし、特集記事にしても耳タコのジャズ・ジャイアントのものばかりで、毎回デジャブ感に襲われ、永劫回帰、輪廻転生の無限ループに紛れ込んだかのような眩暈に襲われるようになっていたので、ここ数年僕は、『スイングジャーナル』の購入を控えていた。

先ほどからネットでスイングジャーナルの休刊のニュースやTwitter を見ているが、僕と同様、「昔は買って読んでいいたが最近は買わなくなった」という内容の発言が多いことに気がつく。どうして古い購読者が今は買ってくれないのか、同社はもっと早い時期に読者の声をリサーチし、なんらかの手を打つべきだったのではないか。

編集長の三森隆文氏は「復刊の可能性を模索する」としているが、もしもいつか実現する日がくるのなら、その時はできれば電子書籍での復刊を果たしてもらいたい。あの分厚く重たいスイングジャーナルは、都内の狭小住宅住いの僕のようなジャズファンにとっては、それだけで購入を躊躇してしまうくらい厄介なものだ。僕は以前からDown Beat 誌をダウンロードして購読しているが、DB誌はたった100頁しかない。広告はあるがわずかで、一か月のジャズの情報としては必要にして十分な分量だ。しかも一年間の購読料が$19.99 と非常に安い。スイングジャーナルもぜひそのような紙面と料金で旬な情報を提供できる魅力ある情報誌として復活してもらいたいものだ。

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2010/05/18 | Comment (11) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Keith Jarrett & Charlie Haden / Jasmine

   ↑  2010/05/17 (月)  カテゴリー: piano
keith_jarrett_and_charlie_haden_jasmine2.jpg
Keith Jarrett & Charlie Haden / Jasmine ( amazon )
2010 ECM
 

Keith Jarrett (p)
Charlie Haden (b)







70年代にアメリカン・カルテットを結成し『 The Survivors Suite ( 邦題:残氓 ) 』などの名盤を世に残したキース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンが31年ぶりに共演したデュオ作品。

2007年、チャーリー・ヘイデンのドキュメンタリー・フィルムの制作中、キースへのコメントを依頼したのがきっかけとなり二人は再会を果たした。その際、キースはチャーリー夫妻を自宅に招き入れ数日間を共に過ごしたのだが、その滞在中に二人は密かに多くの楽曲をレコーディングしていたのだ。

ただし、初めからCD化するために記録されたものではないため、使用したピアノは調整不十分なアメリカン・スタインウェイであったという。しかもキースの自宅スタジオでの録音であり、レコーディング用の音響設定ではないため、決して Hi-Fi な音ではない。

私家録音の域を脱しない演奏内容であることは、録音後3年もお蔵入りしていたという事実からも容易に想像できるのだが、キース自身のライナーノーツによると、この3年間、二人で録音テープを持ちあいながら生活し、リリースに向けて選曲や曲順について激しいディスカッションを繰り返してきたという。いったんお蔵入りになった音源をレコード会社との契約履行のためにCD化してしまった訳ではなさそうだ。真偽の程はわからないが、多少なりとも大人の事情というものもあったのではないかと思うのだが。

全8曲でスタンダード中心。パリのキャバレーを舞台にしたミュージカル映画 『 ムーラン・ルージュ 』の中でのニコール・キッドマンの熱唱が印象的だったジョー・サンプル作の《 One Day I'll Fly Away 》や、慢性疲労症候群で療養中に制作されたソロ作品『 The Molody at Night, With You 』 でも演奏されていたジェローム・カーンの《 Don't Ever Leave Me》なども再演されている。

二人の心の交流が親密に語られていく穏やかな作品なのだが、キース・ファンの反論を承知で云わせてもらうなら、とにかく、ユルい。キースもここまでユルいジャズをやるのかと、愕然とした。前述した『 The Molody at Night, With You 』も確かにユルかったが、まだキース独特の翳りある色気や独特のリリシズムの断片を随所に垣間見ることができた。が、しかし、今作はそんな断片するらみることができない。

こんな音源をCD化しちゃって本当にいいのだろうか、と真剣に心配してしまう。まあ、もはや評価の浮き沈みのないビッグ・アーティストの地位にあるキースだからこそCD化が許されたのだろう。他のミュージシャンがもしもこんな音源をあげたとしても、一発で却下だろう。はじめキースとチャーリー・ヘイデンの再会と聞いて、アメリカン・カルテット時代のような将来を予感させるアヴァンギャルドな気概のある演奏を微かに期待したのだが、やっぱり期待はずれだったようだ。

しかしながら、BGMとして聴き流すにはよいかもしれない。最高に贅沢なBGMを提供してくれるであろう。雨の日にでも一日中部屋に流しっぱなしにして読書なんて、考えただけでワクワクする。まあ、色々と文句はいいながら、結局はファンは買わずにいられないような愛すべき作品ではないだろうか。なんだかんだ云って、今晩も聴いているわけだし。




 中年音楽狂さんの記事 『 何とも穏やかな Keith Jarrett とCharlie Haden デュオ 』 はこちら


 910さんの記事 『 Jasmine/Keith Jarrett/CHarlie Haden 』 はこちら

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2010/05/17 | Comment (29) | Trackback (5) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Keith Jarrett / The Melody at Night, With You

   ↑  2010/05/16 (日)  カテゴリー: piano
keith jarrett_The Melody At Night, With You
Keith Jarrett / The Melody at Night, With You ( amazon )
1999 ECM


Keith Jarrett (p)








キース・ジャレットが慢性疲労症候群という冗談のような奇病に罹患し自宅療養していた1998年に、自宅スタジオで一人籠って録音した極めて私的なピアノソロ作品。

キースの作品群の中では決して名盤の範疇に入る作品ではないが、なぜかこの繊細にして温かみのある孤独な世界観に共感を覚える。キースも孤独の中に身を置き生きているのだろうか。

この作品のなかでは、あの彼独特の唸り声は聴かれない。唸ることもできないくらい疲弊していたのだろうか。

以前に鈴木琢二という方が《 キースの演奏中のうなり声は非音楽的で,まるで絞め殺される寸前の猿みたいだ 》と書いていたが、それ以来、キースの唸り声を聴くたびに猿の苦しそうな顔がフラッシュバックのように目に浮かび曲に集中できず興冷めしてしまう僕には、本作はとてもありがたい作品なのだが。

早いものでこのアルバムが発売されて10年経つが、思えばキースの作品のなかで一番の愛聴盤になってしまった。

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2010/05/16 | Comment (14) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Salvatore Bonafede / Sicilian Opening

   ↑  2010/05/15 (土)  カテゴリー: piano
Salvatore Bonafede _Sicilian Opening 
Salvatore Bonafede / Sicilian Opening ( HMV )
2010 Jazz Eyes


Salvatore Bonafede (p)
Marco Panascia (b)
Marcello Pellitteri (ds)






イタリア人ピアニスト、サルバトーレ・ボナフェデ ( Salvatore Bonafede, Sicily, 1962~ ) の最新作。ファブリツィオ・ボッソのデビュー作 『 Fast Flight 』やジェリー・バーガンジーの『 Jerry on Red 』に代表されるRed 諸作などで知られるボナフェデだが、日本での知名度はまだまだ低いと言わざるを得ない。しかし1991年には Musica Jazz 誌の投票で《 Top Young Player 》に選出されたのを皮切りに現在までに本国はもとより欧米の数多くのトップミュージシャン、たとえばエンリコ・ラヴァ、レスター・ボウイ、デューイ・レッドマン、ラルフ・タウナー、ジェリー・バーガンジー、ジョー・ロバーノなどのサポートを務めてきた実力者である。

本作は彼にとっては9作目となる作品で、メンバーには現在はニューヨーク在住の二人、ベースのマルコ・パナシアとドラムスのマルチェロ・ペリテッリを擁したトリオ編成である。マルコ・パナシアはあのエルダー・ジャンギロフのバンドメンバーとして有名であるし、一方のマルチェロ・ペリテッリはジョン・アバークロンビーやデイヴ・リーブマンやダニーロ・ペレスなどの作品でお馴染みのドラマーで、現在はバークリー音楽大学で教鞭もとる教育者としても知られている。この二人ともボナフェデと同郷のシチリア島の出身である。

そして彼らの作品を制作したのもボナデフェら3人の生まれ故郷であるシチリア州パレルモに本部を置く注目の新興レーベル Jazz Eyes である。このレーベルはまだまだカタログ数はわずか ( 本作が8作品目 ) だが、いまのところハズレがないので、今作にも否応なしに期待が高まる。そして『 Sicilian Opening 』という盤題が示すように、本作はシチリアへのオマージュを捧げており、徹頭徹尾シチリアへの愛に満ち溢れた作品に仕上がっている。

全12曲で、ビートルズの≪ BlackBird ≫ と≪ She's Leaving Home ≫ のカヴァを以外はボナフェデのオリジナル。冒頭に配されたニューオーリンズ風のタイトルトラック。次いでスパニッシュの哀愁感漂う ≪La Grande Ilusion ≫。中盤のアラビア音階を用いた≪ Appunti us Palermo ≫。ゴスペル・フィーリングに溢れる≪ Italian Ingegno ≫。ポップでフォーキーな≪ It Plays From Far ≫ などなど、兎に角、色彩感豊かな玩具箱をひっくり返したかのような楽しみが詰まった作品だ。

地中海の優しい潮風と溶け合うようなボナフェデの音楽。まるで地中海沿岸の街を東から西へ旅しているかのような空想を抱かせる楽曲が並んでいる。イタリア人ジャズ・ミュージシャンは自国のカンツォーネはもとより、他国の民族音楽を巧く取り込み融合することに長けている。実はこのことはジャズに限ったことではない。ロック、とりわけプログレの分野においてもイタリア人はクラシックや民族音楽などの異種ジャンルの融合を繰り返し生き延びてきた。そのあたりの民族性に由来する音楽の独自性は隣国のフランスやドイツと決定的に違うのだろう。

思えばボナフェデほどイタリア人としてのアイデンティティを表現できるピアニストはいないのではないか。善し悪しは別としても彼の音楽には、人間が普遍的に持っている喜びや悲しみや怒りなどの感情の高まりがごく自然な形で表現されている。この理性ではなく感情で音楽をコントロールする術もイタリア人独特のものではないだろうか。

総体としては以前に比べ随分とポップで聴きやすい作風に変化しているようだ。個人的にはエリック・レニーニが2006年の 『 Big Boogaloo 』 で、それまでの繊細な抒情派路線からゴスペル路線に宗旨替えした時のことを思い出した。あるいはバティスト・トロティニョンのサイケデリックなジャケが印象的な『 Flower Power 』あたりを彷彿とさせる作品でもある。より大衆受けするスタイルにはなったことは確かだが、同時に軽くて深みのない、場合によっては陳腐で軽薄と捉えられかねない危うさを孕んだ作品であるともいえる。







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2010/05/15 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Gerardo Bartoccini / Bye Bye Lazybird

   ↑  2010/05/13 (木)  カテゴリー: bass
Gerardo Bartoccini
Gerardo Bartoccini / Bye Bye Lazybird
2010 Dodicilune


Max Ionata (ts)
Pietro Lussu (p)
Gerardo Bartoccini (b)
Marco Valeri (ds)






イタリア人ベーシスト、ジェラルド・バルトッチーニ ( Gerardo Bartoccini, Rome, 1968~ ) の初リーダー作品。日本では今が旬といった感じのマックス・イオナータが参加していることで購入する。

結論から先に言ってしまうと、総じて凡庸な出来。主役ベーシストのヴァーチュオーゾを期待して聴くと激しく物足りなさを感じる作品と言える。

バルトッチーニは80年代にはエレクトリック・ベースでロックを演奏していたが、90年代に入りジャズ・プレイヤーとしてアップライトも弾くようになった。プロとしての活動は92年からで、さまざまなミュージシャンらと共演し、数多くのフェスティバルに出演しているようだが、ほとんど知らないミュージシャンやフェスばかりなので、本国でもそれほど認知されていないミュージシャンなのかもしれない。2002年には自身のレギュラー・カルテットを結成して活動開始しており、今作はそのレギュラー・カルテットによるデビュー作だ。

全9曲で全てバルトッチーニのオリジナル。ベーシストの作曲らしくコード進行に工夫が凝らされていて面白い曲もあるが、メロディーセンスはいまひとつといった印象。疾走感に乏しいハードバップで温度感は低い。という訳でバルトッチーニに良いところはあまりないのだが、致命的なのはその音色。

ベース・プレイヤーの基軸となるものは、もちろんリズムキープ力だが、次いで重要なことはその音色。一時期ベース弾きは、サムポジションで高速のソロをしたいがために恐ろしく弦高を低くし、それこそミクロン単位の調整の果てにエレキベースに肉薄する操作性を手に入れた。その結果プレイヤーは弦を力強く掻きむしる必要がなくなり ( というかビリつくから強く弾けなくなり ) 、アタック感のあるブリブリゴリゴリの本来のウッドベースらしい図太い音が出せなくなった。

基本的には弱音楽器であるウッドベースが、弦高を低く調整することでさらに弱音化が進んだ。当然そのハンディキャップをアンプで補うことになるわけだが、アンプリファイされた音は輪郭がそぎ落とされ、また不自然な減衰波形を示す電気音に変容した。

バルトッチーニのベースはまさにそのアンプリファイされた電気的な音色であり、好ましいものではない。このような音は気になり出すと気になるものだ。そして、そのような調整の施された楽器での拙速なプレイにはあまり共感できないのだ。

リーダーとしてのバンド全体を統率し鼓舞するような裁量もバルトッチーニには見られず、ドラマーのマルコ・ヴァレリーも曲を前へと牽引するグルーブ力に欠け、一方のマックスもリズム隊に引きずられてか、称揚に値する演奏では決してない。

とtという訳で、僕個人としてベースの音色が気になり、曲に集中できないため少々辛めの評価となったが、そのあたりにこだわりがなければピエトロ・ルッソなども結構イイ演奏をしているので悪くはない作品と言えるであろう。




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2010/05/13 | Comment (2) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Lino Brotto All Stars Sextet / Charo di Luna

   ↑  2010/05/11 (火)  カテゴリー: guitar
lino brotto
Lino Brotto / Chiaro Di Luna ( amzon )
2010 philology


Lino Brotto (elg,acg), Fabrizio Bosso (tp,flh), Robert Bonisolo(ts,ss), Bruno Cesselli (p,elp), Ares Tavolazzi (b), Massimo Manzi (ds)







イタリア人の新進気鋭のギタリスト、リノ・ブロット ( Lino Brotto ) のデビュー作。日本での知名度は皆無だろうが、彼が将来を嘱望された有能なミュージシャンであることは、1996年にサレルモで開催されたNational jazz music Contest of Baronissi で優勝し、さらには2004年にはマッシモ・ウルバニ賞を受賞という輝かしい経歴からも察しがつくであろう。

今作は一応ブロットのリーダー作ではあるが、“ All Star Sextet ” を標榜するだけあって、その構成メンバーが素晴らしい。フロントラインを飾るのは欧州トランペット界の頂点に君臨し続けるファブリツィオ・ボッソと、マックス・イオナータの旧師として知られるベテラン・テナー奏者のロベルト・ボニソーロ ( Robert Bonisolo, Niagara Falls, 1966~ ) の二人。ドラムにはボッソやレナート・セラーニらなどのバンドをはじめ数多くのセッションに参加している超売れっ子マッシモ・マンジ。ピアノのブルーノ・セッセリは初見だったがどうもブロットの恩師のようだ。

僕個人的にはテナーのロベルト・ボニソーロの名前に強く惹かれて購入に至った。このボニソーロを聴いたという方はほとんどいないと思うが、実はアントニオ・ファラオの『 Expose 』に参加し、豪快でキレ味鋭い名演を披露していた吹き手だ。 『 Expose 』では “ Robert ” の愛称である “ Bob ” でクレジットされているのでちょっと気付きにくいかもしれない。

その一枚の作品だけで僕の記憶にしっかり刻み込まれ素晴らしい吹き手だったが、その後、耳にする機会が全くなかった。突然の再会。昔、溜池山王駅で一度だけすれ違った超好みの美少女に、数年後に六本木のキャバクラで偶然再会したようなトキメキを感じた ( なんのこっちゃ! でも実話 ) 。

我が愛しきボニソーロは、全編にわたり知的かつ雄々しいソロを披露。『 Expose 』よりは感動薄ではあるが、しかしながらやっぱり巧い。彼は多分に漏れずコルトレーンに傾倒しているらしいが、印象としてはボブ・バーグや古いところではジョー・ヘンダーソンに近いテイストを持っている。重心が低く、説得力のあるフレーズを矢継ぎ早に連発する。彼はイタリア出身かと思っていたが、実はオンタリオ州南西部の都市ナイアガラフォールズ生まれのカナダ人である。バークリー音楽大学で学び、トミー・ドーシー・オーケストラやカーラ・ブレイのバンドでの活動を通して力をつけていった。ここ10年はイタリアに移住しダド・モロニのクインテットなどで活躍しているらしい。

ボッソについては今さら言うことはないが、彼も全ての曲で激しく吹きまくっているのでご安心を。ボッソの露出度がまだまだ低かった頃は “ ボッソ参加作品” な~んて客寄せパンダみたいな扱いをうけ、実際に買って聴いてみるとボッソは一曲ないしは二曲ぐらい吹いて終わりみたいな作品が数多くあった。しかし本作はその点大丈夫。しかし、何というか、ボッソの超絶技巧の高速フレーズを聴いていると、確かに凄いことは凄いのだが、《 スピードの快感 》って、繰り返し聴いていると慣れるもんだなぁ、とつくづく思ってしまう。ボッソのあの速さにこちらの耳が完全に慣れてしまい、当たり前のように享受している自分がいる。《 慣れ 》の次にやってくるのは 《 飽きる 》という感情だ。リスナーってホント身勝手なものだ

あ、そうそう、主役のリノ・ブロットを忘れるところだった。なにしろギタリストのリーダー作としては非常に珍しい編成で、どうしてもこちらの耳はフロントの管二人にいってしまい、なかなかギターに耳が回らない。何故こんな明らかに自分より目立ってしまうことが必至のメンバーを集めたのだろうか。おそらくまだまだ認知度の低いブロットを売り出すための戦略としてボッソらをあえて器用したほうが有利と判断したのだろう。きっとセカンドでは小編成でじっくり聴かせるアルバムを作るはずだ。ブロットのスタイルは乱暴に言いきってしまえばパット・メセニー系。バークリーでミック・グッドリックに師事したくらいだから然もありなん、ってな感じ。確かに巧くて惹かれるものを持っている。幼少期からクラシック・ギターを学んでいただけあって、アコースティック・ギターも見事な腕前だ。もう少し押し出しが強くてもよいと思うが。セカンドに期待する。



なお、“ Bonisolo ” で日本語検索すると拙ブログの古い記事 ( コメント ) が一ページ目ぐらいにインデックスされています。
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Silje Nergaard / Port of Call

   ↑  2010/05/09 (日)  カテゴリー: vocal
Silje Nergaard_port of call
Silje Nergaard / Port of Call
2000 Universal


Silje Nergaard (vo)
Tord Gustavsen (p)
Harald Johnsen(b)
Jarle Vespestad(ds)






16歳のときにジャコ・パストリアスと共演し、1990年にパット・メセニーの後押しを受けデビュー。今やノルウェーを代表するジャズ&ポップス・ヴォーカリストとなった歌姫セリア・ネルゴー( シリエ・ネルゴール?  Silje Nergaard , Steinkjer, 1966~ ) が新作をリリースしました。


とは云ってもリリースされたのは昨年のこと。実はつい先日、拙ブログの読者でいらっしゃるアニキさんから教えていただき、初めて最新作がリリースされていることを知った次第です。で、喜びいそんで注文しようとしたけどこれがDisk Unionにも、HMVにも、Amaoznにもない。唯一、取扱っていたのがいつもはほどんど利用しない Tower Records Online のみ。しかも本国から取り寄せで4週間待ちらしい。通りで情報が入ってこなかったわけです。


10年来の大ファンの僕としては大変楽しみな新作ですが、これがなんとメトロポール・オーケストラとの共演盤なのです。当然、ヴィンス・メンドゥーサが指揮。ということで今から一人で盛り上がっています。


そんな訳で久しぶりに今日は僕が特に愛聴している2000年にリリースされた作品 『 Port of Call 』を聴いています。爽やかな微風が心地よい今の季節にはぴったりの快作です。と云うか、あんまり大きな声では云えませんが、これ、大名盤です(きっぱり)。


デビュー以来、どちらかというとポップス系のフィールドで活躍していたセリアでしたが、いまひとつパッとしなかったため、起死回生を狙って制作されたのがこのジャズ路線の 『 Port of Call 』です。バックはノルウェーのキース・ジャレットの異名をもつピアニスト、トルド・グスタフセン ( Tord Gustavsen , 1970~ ) のトリオで、曲によってはストリングスが入るシンプルな構成。彼女の透明感のあるキュートな声質が北欧の詩情性とうまく溶け合い、なんとも心地よい音空間を創造しています。純ジャズ作品と云っても、もともとポップな資質が備わっている彼女ですから、非常に聴きやすく、いわゆる“ イヤー・キャンディー ( Ear Candy ) ” 的なサウンドです。


スタンダード9曲とオリジナル3曲の計12曲という構成。スティングの≪ If You Love Somebody ≫ なんかも洒落たアレンジで演奏しています。この作品が素晴らしいのは一曲として駄曲がなくどれもイイ曲であるいこと。捨て曲なしの完璧な曲構成なのです。そのなかでも一番のハイライトはオリジナル曲の M-6 ≪ The Waltz ≫。優雅に響くストリングスのさざ波に乗ってセリアの甘くチャーミングな歌声が微かに震える。そこには現在の路線の礎が見られます。


この作品は当時、ジャズチャートでもかなりいいところまでいってヒットしたようです。ジャズ・ヴォーカリストとしての自信をつけたセリアは、その後もコンスタントに作品をリリースしてきましたが、近作は作風としてやや単調な印象も拭いきれません。最新作はレーベルを 古巣Emarcy / Universal Norway からColumbia に乗換え、心機一転、どんなジャズを聴かせてくれるのか大変楽しみです。


Silje Nergaard / A Thousand True Stories
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Yiorgos Fakanas / Domino

   ↑  2010/05/08 (土)  カテゴリー: bass
Yiorgos Fakanas_domino
Yiorgos Fakanas / Domino
2006 ANA ( Aris Nova Athina ) Records


Dave Weckl (ds), Mike Stern (g), Brett Garsed (g), Bob Franceschini (ts), Christos Rafalides (vib), Yiorgos Fakanas (b)





昨日、拙ブログで取り上げたアンソニー・ジャクソンの初リーダー作に共同名義として名を連ねていたギリシャ出身のベーシスト、ヨルゴス・ファカナス ( Yiorgos Fakanas , Athens, 11961~ ) の2006年リリースの作品。

日本では全くの無名ベーシストだが本国ではかなり著名なミュージシャンらしい。日本と同様に米国でもヨルゴスの名前は最近まで知られていなかった。しかし、アンソニー・ジャクソンがある雑誌で《 僕が最も気に入っているベーシストの一人 》としてヨルゴスを紹介したのがきっかけとなり、業界内で話題となったらしい。

80年代初頭から本国では活躍し、これほどまでのテクニックとあらゆる音楽に対応しうるブロードバンドな音楽性を有しながらも、彼の名声が国境を越えることが今までなかったことをある評論家は“ Hellenic culture is more inward-looking and self-protective than ours” と推論している。真偽のほどは分からないが、今回のギリシャの財政赤字問題じゃないが、日本に住んでいるとよほどのことがない限りギリシャの情報など入ってこないことは確かだ。



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Anthony Jackson ・Yiorgos Fakanas / Interspirit

   ↑  2010/05/07 (金)  カテゴリー: bass
anthony jackson 
Anthony Jackson ・Yiorgos Fakanas / Interspirit ( amazon )
2010 ANA music


Anthony Jackson (b), Yiorgos Fakanas (b), Frank Gambale (g), Dave Weckl (ds), Mitch Forman (key), Takis Paterelis (as), Tony Lakatos (ts), Antonis Andreou (tb), Mihail Iosifov (tp)





抜群の譜面初見能力と音楽理論に対する豊富な知識を備え、更には超高速変態運指から繰り出される独特のグルーブ感を武器に、70年代初頭のフュージョン黎明期から現在まで、40年にわたり第一線で文字通りファーストコール・ベーシストとして活躍し続けてきたアンソニー・ジャクソン ( Anthony Jackson, NY, 1952~ ) 。彼の待望の初リーダー作がリリースされました。

還暦まじかのこの期になって初めてのリーダー作とは、けっこう意外な感じを受けます。今、“ 待望の初リーダー作 ” なんて書いちゃいましたが、これ嘘。誰もアンソニー・ジャクソンにリーダー作なんて期待していなかったと思うのですが....。

今作は正確にはアンソニーとギリシャ人ベーシスト、ヨルゴス・ファカナス ( Yiorgos Fakanas , Athens, 1961~ ) の共同名義による作品です。このヨルゴスというベーシストですが、恥ずかしながら僕は初めて耳にするミュージシャンなのですが、トンデモもない馬鹿テク・ベーシストです。慌てて彼についてググってみたところ、80年代から母国ギリシャを中心に欧州各国で活躍し、既に700作品以上のアルバムに名を連ね、リーダー作も10作品程リリースしている有名人らしい。なんでも、アンソニーがこのヨルゴスのファンらしく、今回のプロジェクトもアンソニーの方からヨルゴスにオファーがあり、しかもヨルゴスの作曲・編曲力を高く評価し、ほぼ全曲をヨルゴスに制作を依頼したらしいです。

全9曲で、ショーターの≪ Footprints ≫ 以外はすべてヨルゴスのオリジナル曲。アンソニーも晴れてリーダー作を出すのだから、全部とは言わないまでも自曲を数曲織り交ぜればよかったのに。ちょっともったいない。メンバーにはフランク・ギャンバレやデイヴ・ウェックル、それからミッチェル・フォアマンらが参加。また、トニー・ラカトスを含むホーン・セクションも加わっていてブラス・ロック風のテイストもみられる。さらにはストリングス入りの楽曲もあったりと、基本はハードコア・フュージョンですが、多彩な楽曲で構成されています。

アンソニーとは古くからの仲間であるフランク・ギャンバレやデイヴ・ウェックルらは、ヨルゴスの旧作に参加歴もあり、結局は気心知れた仲間だったようです。

ヨルゴスの馬鹿テクぶりにびっくりした僕は、彼の前作である『 Domino 』を手に入れたのですが、これがまたすごくカッコいい作品でした。内容的にはこのアンソニーに提供した楽曲とかなりの部分で似ています。個人的には『 Domino 』の方が中弛みがなくて好きですが。収録曲はほとんどがダブルベース編成で、二人でパートを振り分けして演奏しているのですが、二人とも演奏スタイルがけっこう似ているので、どっちがどっちかすぐには判別できないくらい似ていたりします。

理由はわかりませんが、アンソニーも97年に脳卒中で倒れてからはそれ以前のようなモジュール系のエフェクターを通さないナチュラルな音色になったし、さらにはピック弾きも多分しなくなってきているみたいです。なので昔ほどキャラが立っていないせいもあり、ヨルゴスとの区別がつきにくい。まあ、ヨルゴスは四弦だからアンソニーのようなhigh-C ( しかも彼のフォデラは28フレットある!! ) をふんだんに使ったソロはしないし、その一方で、ヨルゴスはフレットレスやスラップも表現手段として用いるので、そのあたりはふたりの差異が出るのは当然です。

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