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Joe Martin / Not By Chance

   ↑  2009/11/05 (木)  カテゴリー: bass

joe_martin _not by chance



ニューヨークで活躍中のベーシスト、ジョー・マーティン ( Joe Martin , Kansas City , 1970~ ) の最新作。

自身のリーダー作としては、2002年に FSNT からリリースされた『 Passage』 に続く二作目となる。本作の瞠目すべき点は何と云ってもクリス・ポッターとブラッド・メルドーの参加に尽きるだろう。大体において、ジョー・マーティンなんてベーシストを知っている人はほとんどいないだろうから、本作を買うファンは、クリス・ポッター・ファンかブラッド・メルドー・ファンか、あるいは両方のファンだろう。

僕はマーク・ターナー狙いで買ったマーティンの前作 『 Passage』 を所有していたが、その美しいジャケット・デザインは覚えていたものの、その内容についてはまったく記憶に残っていなかった。今回、この新作を聴いたついでに前作を聴き返してみたが、幻夢的な美しさが全編に横溢したなかなかの好盤だった。ただし、やはり彼のベースにはこれといった特徴は聴き取れなかった。

全9曲で、ジャコの《 The  Balloon Song 》 以外はすべてマーティンのオリジナル。デビュー作もそうだったが、彼のオリジナルはとても美しい。別段フックの効いた曲を書くわけではないが、60年代のモード・ジャズに代表される古典的な美と、現代コンテンポラリー・ジャズの浮遊するスリル感が融合した美曲を彼は書くことができる。

率直に云わせてもらうと、彼のベースには聴いてすぐ彼のプレイだと分かるような特徴が見られない。系統的には当然NYコンテンポラリー系にカテゴライズされるのだろうが、この分野ではすでに確固たる地位を築いているスコット・コリーやリューベン・ロジャーズやラリー・グレナディアやマット・ペンマンらなどに比べて、マーティンが音楽的アドバンテージがあるとは到底思えない。( アドバンテージがあるとすれば、前述したように作曲力ぐらいだろうか。)


それでも、生き馬の目を抜くニューヨークのジャズ界で、マークー・ターナー、カート・ローゼンウィンケル、ジョーゴードンらなど、多くの一流ミュージシャンから信認されているという事実を鑑みると、僕らにはわからないそれ相当の音楽的な魅力が彼にはあるのだろうと想像する。

( そのような閉ざされたプロ・ミュージシャンの世界における内部評価って、わかるはずないよね。まあ、どの社会でも外部評価と内部評価の乖離ってあるものだし。 )

閑話休題。兎に角、本作の聴き所はクリポタとメルドーなのだが、このふたり、自己のリーダー作で見せる鬼気迫る超絶技巧のプレイとは違って、比較的普通っぽい演奏をしているのが面白い。まあ、そのあたりに激しく物足りなさを感じるファンもいるであろうことは理解できるが、僕はこの緩い感じの二人がけっこう好きだ。プロは常にパフォーマンスを最大化すればイイ、というものではないのだ。

だからといって彼らが手を抜いているわけでは決してない。弛緩しない程度の緊張感は最後まで持続しているし、頂点を極めた者同士だけに許されたコミュニケーション・プロトコルを用いて、素晴らしいインタープレイを展開している。

メルドーは他のミュージシャンのサポートにまわると、時として非常に人間味のある優しい表情を垣間見せることがある。いわば変身前の姿が本作には記録されている訳で、そこがメルドー・ファンには嬉しいのだ。メルドーといえど、常にクライマックスフォームで戦っているのではない、のだ。

クリポタも余裕のソロを展開しているが、そこは百戦錬磨のクリポタ。他の誰にも真似できない斬新なパッセージを矢継ぎ早に繰り出し、聴く者を圧倒する。

思うに、クリポタの凄ところは、常に未知のフレーズを創造しながらアドリブを構築していけるところだ。世の中には数多のサックス・プレーヤがいるが、どのプレーヤーも似たりよったりのフレーズに終始しているように聴こえる。サックスの機能的構造の制約下のもとでは、吹きやすいフレーズと、指順の関係で極めて吹くのが困難なフレーズがあると思う。その結果、長いジャズ・サックスの歴史の中で頻繁に用いられるフレーズと淘汰されていくフレーズ、さらには歴史上、まったく吹かれることのなかった音列などがあるのだろう。プリポタの凄いところは、そのようなサックスの構造的制約あるいは限界をさらっと超えたところでアドリブを構築できることだと思う。

とまあ、そんなことを考えながら聴いている。各曲の詳細については僕のブログお仲間さんたちが書いているので割愛するが、コルトレーン・カルテットを喚起させるような M-6 《 Once Before 》 やジャコの複雑なコード進行からフリー・フォームに移行する M-5 《 The Balloon Song 》など、なかなか凝った楽曲が揃っていて文句なしの秀盤だ。

最後に録音について一言。面白いことにクリポタのサックスが左チャンネルに、マーカス・ギルモアのドラムが右チャンネルに定位しているのだ。偏っているのではなく、クリポタは完全に左チャンネルからしか聴こえないし、ギルモアは完全に右チャンネルからしか聴こえないのだ。ピアノとベースは中央に定位しているので、このCDをヘッドフォンで聴くとき、左のヘッドフォンをはずして右だけで聴くと、なんとブラッド・メルドー・トリオの演奏になってしまう!  わけだ。録音はあのジェームズ・ファーバーなのだが、こんな録音は初めて聴いた。
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Comment


Re: Joe Martin / Not By Chance

crissさん、こんばんは。
こちらからもTBさせていただきます。
ジョー・マーティンは俺が俺がと前に出てくるタイプのベーシストではないのですが、だからこそNYのやり手ミュージシャンたちに好かれているのかもしれませんね。
現代的な曲調のものにも難なく対応できる人ですし。
クリポタ論はcrissさんと同感で、その斬新な音使いが最大の魅力だと思ってます。
録音は音の定位というか音場感がどう考えても変ですよね。
ファーバーにしてはホント珍しいです。

nary |  2009/11/05 (木) 23:38 No.823


Re: Joe Martin / Not By Chance

>ジョー・マーティンは俺が俺がと前に出てくるタイプのベーシストではないのですが、だからこそNYのやり手ミュージシャンたちに好かれているのかもしれませんね。

その通りだと思います。でしゃばりすぎる、あるいはバンドを仕切りたがるベーシストって、けっこう周りから煙たがられますからね。
たぶん彼は、信頼できる技術力と人間性の良さで多くのミュージシャンから信認されているんでしょうね。

TBありがとうございました。

criss to nary |  2009/11/06 (金) 09:57 No.824


面白かったですね。

>弛緩しない程度の緊張感は最後まで持続しているし、頂点を極めた者同士だけに許されたコミュニケーション・プロトコルを用いて、素晴らしいインタープレイを展開

ホント、こういう飛び抜けて才能のある人達の会話って、面白いですよね。
この人ベースうまいと思いますが、皆さんの仰るように超絶技巧派って感じではなく、むしろ、無難な感じ。でも、全体を見つめる目があるんでしょうねぇ。。

そう、、誤字脱字の女王がなんなんですが、、
何カ所か、、クリポタが「プリポタ」になってるぅ。
可愛すぎます。。

トラバしました。
でもね、クリスさまのトラバ届いてません。
よかったら、もう一回お願いします。

すずっく |  2009/11/06 (金) 16:57 [ 編集 ] No.826


Re: Joe Martin / Not By Chance

このアルバムは比較的全体が落ち着いているので、最近何度もかけています。う~ん、いいなあ、こういう世界。時に各ミュージシャンのフレーズに耳を傾けたり、全体のサウンドで聴いたり。

最初は1曲目だけの印象でこの人も変拍子ばかりの曲かな、と思ったのですが、素直な曲が(いや、気がつかなかっただけかもしれませんが)多かったので、意外な感じでした。でも、好みの方への意外性だったので、よかったです。

TBさせていただきます。

910 |  2009/11/06 (金) 18:10 No.827


Re: Joe Martin / Not By Chance

Joe Martinは、たしかに堅実な感じではありますが、目立つタイプではないですね。

全体に鬼気迫るようなものすごいソロの応酬とかがあるわけではないので、その分地味に聞こえるのかなぁと..


逆TBさせていただきます。

oza。 |  2009/11/07 (土) 07:51 [ 編集 ] No.828


Re: Joe Martin / Not By Chance

>何カ所か、、クリポタが「プリポタ」になってるぅ。
可愛すぎます。。

あら、ホントだ!
なかなか可愛いネーミングなので、そのまま訂正しないて、
なんて一瞬思いましたが、馬鹿だと思われそうなので、
直しておきます。

言い訳じゃないんですが、この記事、当直しながら、
持参した小さなネットブックで入力していなんですよ。
あのネットブックって、小さくて、キーボードのピッチが
通常のものより狭いので、よくミスるんですよね。
しかもモニアも小さいから、ミスった字がよく見えなくて。

そんなわけで、プリポタになっちゃたのです。

TBもう一度してみます。
中年音楽狂さんのところもそうですが、TBできないのって、
ストレスですね。

今日、柏で外山さんのライブがあるのですが、
てっきり夜だと思っていたら昼からでした。
夜ならいくらでも行けたのですが、昼は子供のことで
用事ができて行けなくなりました。残念です。

criss to suzuck |  2009/11/07 (土) 10:42 No.829


Re: Joe Martin / Not By Chance

>う~ん、いいなあ、こういう世界。時に各ミュージシャンのフレーズに耳を傾けたり、全体のサウンドで聴いたり。

まったく同感です。無意識のうちにトータル・サウンドと各プレーヤーのフレーズとの間を、耳が行ったり来たりして、何度聴いても新たな発見があるような、そんな含蓄のある作品ですよね。

criss to 910 |  2009/11/07 (土) 10:48 No.830


Re: Joe Martin / Not By Chance

ozaさん、こんにちは。

>全体に鬼気迫るようなものすごいソロの応酬とかがあるわけではないので、その分地味に聞こえるのかなぁと..

一見、地味な演奏に聴こえる中に、キラッと光るフレーズや心温まるコール・アンド・レスポンスなんかが散りばめられていて、やはりこいつらタタモンじゃないぞ~、と唸らせる演奏だと思いましたけどね。

criss to oza |  2009/11/07 (土) 10:51 No.831


Re: Joe Martin / Not By Chance

crissさん,おはようございます。昨日ようやく帰国しました。このアルバム,デリバリーされてから,なかなかちゃんと聞く機会がなくて,記事のアップが遅れてしまったのですが,出張中に飛行機で聞いて,それを記事にしてみました。

一聴地味に聞こえるものの,やはりメンツなりの魅力に溢れていて,私は嬉しくなってしまいました。このバンドはサックスがMark Turnerに代わったメンツで,NYCでライブもやったようです。私がNYCに行ったときには終わってましたが...。見てみたかったです。

ということで,うまくいくかわかりませんが,TBさせて頂きます。

中年音楽狂 |  2009/11/08 (日) 07:04 [ 編集 ] No.840


Re: Joe Martin / Not By Chance

中年音楽狂さん、おはようございます。
海外出張、お疲れ様です。今日は休みですよね。
ジャズでも聴きながら、十分体を休めて、明日からの仕事に備えてください。

このバンドはサックスがMark Turnerに代わったメンツで,NYCでライブもやったようです。

ジョー・マーティンの前作がマークターナーでしたからね。でも僕はターナーより断然クリポタのほうに魅かれます。以前はターナー大好きだったのですが、音の分厚さの点でクリポタのほうが好みです。それにしてもターナーは完全に復帰されているようですね。そのことにまずは驚いてしまいますが。


ということで、中年音楽狂さんからのTBはうまく行っているようですので、こちらからもTBさせていただきます。

今日は家の大掃除をしながら、朝からbigband ばかり聴いています。

criss to 中年音楽狂さん |  2009/11/08 (日) 12:22 No.841


Re: Joe Martin / Not By Chance

crissさん、こんばんは。
ようやく聴けたのですが、僕にとっては愛聴盤になりそうです。ストライクです。メルドーはこのくらいのさじ加減だといい塩梅になってます。
再生時の定位はこれはこれで何か狙いがあるのかもしれませんね。違和感は消えませんけどね。
遅ればせながらTBさせていただきます。

とっつぁん |  2009/12/18 (金) 20:48 No.934


Re: Joe Martin / Not By Chance

>メルドーはこのくらいのさじ加減だといい塩梅になってます。

そういう風に思っているメルドーファンってけっこういますよね。
ぼくも同感です。メルドーも初期のころ、たとえば「introducing 」「Art of Trio 」「 Songs 」などはその範疇に入るんじゃないでしょうかね。僕もメルドーを聴こうとおもうと、どうしても初期の作品に手が伸びてしまいがちです。

>再生時の定位はこれはこれで何か狙いがあるのかもしれませんね。違和感は消えませんけどね。

この盤は、内容とは別にして、この不思議な定位のおかげで、強烈な印象を聴き手に植え付けましたね。

criss to とっつぁん |  2009/12/18 (金) 23:25 No.935

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