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雨の日にはジャズを聴きながら90年代以降のジャズを気ままに綴っています。 旧ブログ 『 雨の日には JAZZ を聴きながら 』 からのデータ移行は終了しました。ジャズ以外にも、時々デジタル関連の物欲記事、最近ハマっているカメラの話題も少しアップしています。 

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このページの記事目次 (カテゴリー: bass

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Christian McBride & Inside Straight / Kind 0f Brown

   ↑  2009/09/12 (土)  カテゴリー: bass

christian mcbride kind of brown





米国のジャズ専門誌 『 Down Beat 』 の2009年8月号において、第57回批評家投票 ( 57th Annual Critics poll ) のベース部門でWinner ( Acoustic Bassist of the Year ) に選ばれ、名実ともに米国を代表するトップ・ベーシストとなったクリスチャン・マクブライド ( Christian McBride , 1972~ , Philadelphia ) のMack Avenue Records 移籍後初となる作品。

前作の3枚組ライブ盤 『 Live at Tonic 』 以来3年ぶり、スタジオ録音盤としては『 Vertical Vison 』 以来6年ぶり、そして全編ウッドベースだけで作り上げたアコースティック作品としては95年のデビュー作 『 Gettin' to It 』 以来、実に14年ぶりとなる意欲作だ。

DOOWNBEAT 0908
僕が初めてマクブライドのベースを聴いたのはロイ・ハーグローブの91年の作品 『 Public Eye 』 だった。この作品はハーグローブのベストだと思っている名作であり、いまだに聴き惚れている。この作品はドラムのビリー・ヒギンズ以外は当時、昇り龍のごとき勢いのあった新進気鋭のミュージシャンが集まっていて、そのなかにニューヨークに出てきたばかりのマクブライドの姿もあった。しかし、フロントラインのハーグローブとアントニオ・ハートの溌剌とした素晴らしいソロに耳は奪われ、マクブライドの演奏はほとんど印象に残らなかった。

しかし、このライナーノーツに次のように書かれていたのだ。

≪ とびきり若いのがベースのクリスチャン・マクブライドで、何と今年18歳。このアルバムではまず話題をよぶのが彼のベースだろう。音色、ピッチ、正確な技術、ダグ・ワトキンス2世を思わせる豪快でソウルフルなベース・ワークと、どれをとってもベース界に現れた巨大な新星たるを疑わない。~ ≫

この賛辞をマクブライドに送ったのが評論家の悠雅彦氏である。現在のマクブライドの演奏を聴いて絶賛するなら分かるが、デビュー当時の彼の演奏を聴いて、ここまで評価できるのはやはりプロだけあって耳がずば抜けて良いわけだ

 
マクブライドは確かに当時から巧かったのだが、でも、彼はその後、数多くのセッションやギグをこなしていくうちにどんどん巧くなっていったミュージシャンだ。明らかに90年代前半よりは後半が、90年代よりは今の方が単純に技術的に巧くなっているように思う。

父親と祖父は地元フィラデルフィアで活躍するベーシストであり、そのような恵まれた環境で生まれ育ったマクブライドは10代の早い時期に既に一通りのベースのテクニックを身につけていた。レイ・ブラウンのビバップ初期の録音物を良く聴いて彼に傾倒していくその一方で、ジェームス・ブラウンをアイドルとして育った。そのため彼が最初に手にしたベースは意外なことにエレクトリック・ベースだった。

89年に故郷を離れニューヨークに進出。ジュリアード音楽院に通いながら様々なアーティストと共演していったが、プロとしてはまずアップライト・ベースで認められた。90年代前半は知る限り、すべてアップライトを弾いている。

joshua redman blues for pat当時のマクブライドの演奏はジョシュア・レッドマンの初期の作品で聴くことができる。93年にはジョシュア、パット・メセニー、ビリー・ヒギンズらと大規模なツアーに初めて参加している。そのツアーの演奏は海賊盤 『 Blues for Pat 』 ( Jazz Door ) として世に出回っているが、これが海賊盤ながらとても出来が良い。ただ、マクブライドのベース音はうまくマイクで拾えていないのが惜しい。

90年代前半にアコースティック・ベーシストとして不動の地位を築きあげたマクブライドは、90年代後半になると突如エレキ・ベースを手にしてセッションやギグに参加するようになり、よりコンテンポラリー色の強いサウンドを追及していくことになる。既に十分のエレキ・ベースの技術力は持っていたが、周囲からはエレクトリック・ベーシストとしては信頼されていなかったとマクブライドは語っている ( DOWNBEAT August 2009, P28 ) 。しかし、頻繁にエレキ・ベースを用いるうちに徐々にエレクトリック・ベーシストとしての地位も獲得していったようだ。
 
彼の第二作目以降からは常にエレキ・ベースの曲を織り交ぜ、むしろ、リーダー作ではエレクトリック・サウンドに重点が置かれている作品が目立つ。 前作 『 Live at Tonic 』 は惜しくも2007年に閉店してしまった Lower East Side のライブハウス、TONIC での3枚組実況盤だが、これが完全にエレクトリック・ファンク・バンドであり、完全に “ あっち側 ” に行ってしまった感があった。(大好きだけど)

ところが、今回は逆に全編アコースティックの原点回帰路線に宗旨替えしているのだ。『 Kind of Brown 』 というタイトルが物語るように、本作は恩師であるレイ・ブラウンへのトリビュート作品としの側面ももちろんあるのだろうが、実際にレイ・ブラウンに関連する曲はなく、むしろ恩師のフレディー・ハバードやシダー・ウォルトン、それから友人の故ジェームズ・ウイリアムスに捧げた曲などで構成されている。

メンバーは、マクブライドがニューヨークに進出した当時から世話になっているカール・アレンを軸に、ピアノのエリック・リード、サックスのスティーブ・ウイルソン、ビブラフォンのウォーレン・ウルフを擁したクインテット構成。バンド名は『 Inside Straight 』という。2008年にモントレー・ジャズ・フェスティバルに本バンドが出演した際につけられた名前だ。≪Inside Tonality ≫ で≪Straight Ahead ≫ に行こうぜぇ~、みたいなニュアンスだろうか。

≪ ニューヨークにやってきて偉大なるジャズ・ミュージシャン達とプレイしているうちに、自分は結局、ポール・チェンバースやレイ・ブラウンの精神に基づいてプレイしているのだということに気がついたんだ。そして、なにか足を踏み鳴らすようなストレート・アヘッドなジャズをやってみたいという願望がこみ上げてきたんだ。最近はスイング・ベースに戻ってきたよ。≫ と、マクブライドは云う。

本新作は全10曲。マクブライドのオリジナル7曲とエリック・リードのオリジナル1曲。それからフレディー・ハバードの≪Thema for Kareem ≫とスタンダードの≪ Where are You ? ≫ 。

冒頭曲 ≪ Brother Mister ≫ はミディアム・テンポのシンプルな12小節ブルース。マクブライドは 《 完璧なオープニング・チューン 》 と云っているが、僕個人としてはこういうオ^プニングは拍子が抜ける。さあ、聴くぞ~とCDをトレイに乗せて期待しているところにブルース、それもミディアム・テンポで始まると一気にテンションが盛り下がってしまうのだ。でも悪くないブルースではある。しかもキーが “ E ” というのが珍しい。

2曲目 ≪ Thema for Kareem ≫ は、フレディー・ハバードのオリジナル曲。コード進行がトリッキーで、しかも1小節ごとにコード・チェンジしていく難曲。マクブライドが89年にニューヨークに上京して最初に雇われたのがフレディー・ハバードのバンドだった。当時のスポンサーであったカール・アレンの紹介でハバードに会ったが、当時18歳だった彼を雇い入れるにハバードは最初は躊躇したようだ。
そのハバードはこの録音後、程なくして亡くなり ( 2008年12月29日没 ) 、はからずも追悼曲となってしまった。

6曲目 ≪ Shade of the Cedar Tree ≫ は親友のシダー・ウォルトンのために書いた曲で、マクブライドの95年のデビュー作 『 Gettin' to It 』 で初演されている。
 
8曲目 ≪ Uncle James ≫ は04年に肝臓癌で若くして亡くなられたピアニスト、ジェームズ・ウイリアムスに捧げた物悲しくも美しいメロディーを持った曲。

9曲目 ≪ Stick & Move ≫ は高速モード一発のような曲。マクブライドは基本的にブルースだと云っているが・・・。≪ go for broke ( 一か八かでやってみよう ) ≫ で打ち合わせもなく録音されたようだが、本作のなかで唯一緊張感が漲るコンテンポラリー系の演奏だ。マクブライドのベースラインも美しいが、スティーブ・ウイルソンやエリック・リードも矢継ぎ早に畳みかけるような
渾身のソロを聴かせてくれる。

最後の≪ Where Are You ? ≫(  lyric by Harold Adamson ; music by Jimmy McHugh ) は1937年の映画 『 Top of The Town 』 のために書かれたバラードで “ 僕を残してあなたはどこに行ってしまったの。” という失恋の歌。この曲をマクブライドはピアノをバックにボーイングだけでテーマを奏でる。作品の最後を飾るにふさわしいしっとりとした美曲である。ジュリアードを出ただけあって、ボーイングも流石に巧い。

 
ビブラフォン、ピアノ、アルトという楽器構成も影響してか、総じてクリーンなサウンドの質感が心地よい好盤であった。特にウォーレン・ウルフのビブラフォンが常に爽やかな余韻を振りまき、アルバム全体の雰囲気に重要な役割を演じているようであった。マクブライドのオリジナルも凝った楽曲ではないが、丁寧にアレンジされた繊細さが随所に感じられた。

マクブライドはベース・ソロが好きではないと云っていたが、本作でもソロらしいソロもなく、気負ったフレーズもなく、バンドのトータル・サウンドへの気配りと、ビートを刻むことに集中しているようだ。こんなに耳に違和感なく馴染むマクブライドの作品は聴いたことがない。メンバーもリラックスしているようで、最後まで弛緩しない程よく緩やかな緊張感が持続し、聴いているほうとしても実に心地よいのだ。

ロック、ファンク、ブルースなど、何でも飲み込んだ変幻自在のマクブライドもカッコいいが、こういう純然たる4ビートもなかなか味があっていいもんだ。ニューヨーク・デビュー後20年を総括する意味でも重要な作品であり、また、文句なしの快演といってよいだろう。

Christian McBride & Inside Straight / Kind 0f Brown   ( amazon ) 星1つ星1つ星1つ星1つ
Christian McBride  ( b)
Carl Allen  ( ds )
Eric Scott Reed  ( p )
Steve Wilson  ( as )
Warren Wolf  ( vib )

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2009/09/12 | Comment (2) | Trackback (2) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Assaf Hakimi / Some Other Day

   ↑  2009/09/01 (火)  カテゴリー: bass
assaf hakimi



イスラエル出身で現在はニューヨークで活躍中の左利きのベーシスト、アサフ・ハキミ ( Assaf Hakimi , Jeeusalem , 1977~ ) の自主制作によるデビュー作。同郷のサックス奏者、エリ ( イーライ ) ・デジブリ ( Eli Degibri , 1978~ ) が参加しているので買ってみた。イーライはデビュー以来の大ファンで、ずっと追いかけてきたミュージシャンだ。

ドラムはニューヨーク界隈で超売れっ子のクラレンス・ペンが担当している。

それ以外のメンバーであるトロンボーンのジョナサン・ヴォルツォク ( Jonathan Voltzok , 1983~ ) とピアノのアロン・ヤヴナイ ( Alon Yavnai , 1969~ ) は全く聞いたことのないミュージシャンであり、その点が不安だったのだが、結果的にはこの無名のイスラエル人ふたりが非常に素晴らしく、思わぬ収穫となった。
 
全9曲で、うち7曲がハキミのオリジナル。非4ビートが主体で、一曲だけエレクトリック・ベースを弾いている。

同じイスラエル出身のベーシストではすでにニューヨークで確固たる地位を築きあげているアヴィシャイ・コーエンやオマー・アヴィタルらがいるが、彼らに比べるとハキミのスタイルはとてもオーソドックスであまり個性は感じられないし、とくべつ技巧的であるわけでもない。容姿のアクの強さとは対照的に、拍子抜けするくらいソロも地味なのだ。がしかし、哀愁美漂うジューイッシュ・メロディをベースにしたコンテンポラリーなオリジナル曲はどれも素晴らしく、そこに彼の強みがあるのではないか。

イーライはいつになく激情的に吹きまくる。ねじれるアウター・フレーズに時折哀愁漂う耽美的フレーズをちりばめ、アドリブを構築していく様は圧巻だ。基本的にはマーク・ターナーやジョシュア・レッドマンらと同じ言語でジャズを語っているのだろうが、音色が彼らよりずっと雄々しく豪快なのが素晴らしい。イーライを聴くとマーク・ターナーやジョシュア・レッドマンのサウンドが女々しく感じられるほどだ。

そしてイーライに負けず劣らず素晴らしいソロを聴かせてくれるのが前述トロンボーンのジョナサン・ヴォルツォクとピアノのアロン・ヤヴナイの二人。

ヴォルツォクは2004年に母国イスラエルを離れ渡米し、現在はニューヨークを中心に活躍している新進気鋭のトロンボニスト。スライド・ハンプトンとの2管編成でリーダー作も制作しているようだ。イーライとのアドリブ合戦ではやはり楽器の性格上、どうしても見劣りするが、それでも正確なタンギングにより16分音符の連なるパッセージも歯切れよく吹き切り、技術力の高さを見せつける。また、M-3 ≪Sara ≫ のようなバラードでも、メロディーラインの深くエモーショナルが表現が素晴らしく、聴き手を魅了する。

つづく。

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2009/09/01 | Comment (6) | Trackback (2) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Pietro Ciancaglini / Reincarnation of A Lovebird - Homage to Charles Mingus

   ↑  2009/08/26 (水)  カテゴリー: bass

Pietro Ciancaglini



High Five Quintet のベーシストとして人気のピエトロ・チャンカリーニ ( Pietro Ciancaglini , Roma , 1975~ ) のデビュー作。これがなんとチャールス・ミンガスへのトリビュート盤というからちょっと意外に思ったが、Albore Jazz の主宰者である富田聡氏のインタビュー記事 ( Swing Journal 7月号 226頁 ) によると、≪ ミンガスはチャンカリーニが最も影響を受けた作曲家の一人≫ なのだそうだ。あくまで≪作曲家 ≫としてのミンガスを高く評価しているのであって、≪ ベーシスト≫ としての評価ではないわけだ。

セロニアス・モンクとチャールス・ミンガスはモダン・ジャズ史上最も強烈な個性を放った天才であり、ふたりとも没後に再評価され現在でも不動の人気を誇っている点でも共通している。がしかし、モンクへのトリビュート盤は数多くあれど、一方のミンガス・トリビュート盤は意外に少ない。すぐに思い浮かぶのがジョニ・ミッチェルの 『 Mingus 』 ぐらいだろうか。先日、WOWOWで放映された70年代のミンガス・バンドのライブ映像の際ピーター・バラカン氏は、ハル・ウィルナーによるミンガス・トリビュート作品 『 Weird Nightmare: Meditations on Mingus 』 ( 1992 ) を紹介してた。しかしこれらはいずれも純粋なジャズの作品ではない。そう考えるとミンガスの音楽に正面から対峙して作り上げられたジャズ作品は、ほとんどないと云ってもよいだろう。ある意味 ≪The Mingus Big Band ≫ が唯一のトリビュート・プロジェクトかもしれない。

ミンガスの音楽はミンガス自身が行使する絶対的な統率力、支配力のもとで初めて具現化できる音楽であり、曲だけが彼の手を離れ広くジャズ界に浸透していうような性質を持たないことが、敬愛されながらもカヴァ作品が作られない理由なのかもしれない。さらにミンガスの曲は管アンサンブルが必須であり、最低でも2管フロントラインを構成しないと実現できないという制約もカヴァを難しくしている要因ではないだろうか。その意味でも今回のチャンカリーニのトリビュート作品は非常に興味深いといえよう。

余談ながら同じイタリア人では、50年代のイタリアン・ジャズの黎明期から第一線で活躍していたベース界の重鎮、ジョルジオ・アゾリーニ ( Giorgio Azzolini , 1928~ ) はミンガスの影響を強く受けたミュージシャンであり、≪イタリアのミンガス≫ なんて云う惹句が付けられていた程だった。

また、最近ではRoma Trio やジョバンニ・ミラヴァッシのサポートで知られるチャンカリーニと同年齢の中堅ベーシスト、ジャンルカ・レンジ ( Gianluca Renzi , Frosinone , 1975~ ) がミンガスとジョーヘンダーソンのカヴァ集 『 CHARLES&JOE 』 ( 2007 ) をリリースするなど、本国よりもイタリアでちょっとしたブームになっているようだ。

閑話休題。本新作は誰もが一度は聴いたことのあるミンガスのオリジナル8曲と、チャンカリーニのオリジナル2曲を含む全10曲の構成。フロントラインには今が旬のテナー奏者、マックス・イオナータとロベルト・ガトーのバンドで人気沸騰中の新進気鋭のアルト奏者、ダニエル・ティッタレッリ ( Daniele Tittarelli ) の2管編成。あくまでゲスト扱いだがアルゼンチン出身の凄腕マルチリード奏者ジャビエル・ジロット ( Javr Girotto ) が4曲で参加している。ジロットはここではバリトンを吹いているが、これが滅法巧い。ミンガスのサウンドにはこういうバリトンの深く沈む音域がよく似合う。ちょうど The Mingus Big Band でロニー・キューバのソロで一気に盛り上がるのも同じ理由だろう。

冒頭からいきなり ≪So Long Eric ≫ で始まる。チャンカリーニ の緩やかにウネるイントロからティッタレッリとイオナータの神秘的な感覚を醸し出すテーマが奏でられると一気にミンガス・ワールドに引きずりこまれる。今まで幾度となく聴いてきた≪So Long Eric ≫の旋律なのに、瑞々しい輝きを放ち聴き手の心深くに響いてくる。源旋律を全く崩していないのに実に不思議だ。ミンガス独特のアクがすっかり抜けて、都会的で洗練されたサウンドに生まれ変わっている。 The Mingus Big Band で垢抜けたミンガス・ワールドの面白さは承知しているはずだが、ここまで美しいミンガスは初めて体験した。計り知れないポテンシャルを内包したミンガスの楽曲群は、イタリアの感性豊かなミュージシャンの手によって丹念に磨きあげられた鉱石のように美しく輝きを放っている。

チャンカリーニもオリジナルもミンガス曲の中にあって全く違和感を感じないほど機微に富んだ優れた楽曲で、彼のソングライティング能力の高さにあらためて感心させられた。と同時に、丁寧に聴き込んでいくと彼のベースラインが実に良く歌っているのに気づく。かなり弾き込んだラインだ。High Five Quintet ではどうしてもフロントの派手なパフォーマンスに耳を奪われ、正直チャンカリーニのベース音にまで気が回らないのだが、かなり丁寧にラインを刻む名手であることは疑いの余地はない。

一聴して地味な印象を受けた作品であったが、聴き込むうちにじわじわと心に沁み入るなかなかの好盤だと感じた。メンバーの良さもあって本作は長きに渡り付き合える作品になりそうだ。

Pietro Ciancaglini / Reincarnation of a Lovebird ( amazon ) 
星1つ星1つ星1つ星1つ
2009  Rearward RW131CD
[ Schema の傍系レーベル Reawardは、再発専門レーベルかと思っていたけど、新譜も制作しているんだね。新譜なら Schema から出せばいいのにね ]

Pietro Ciancaglini  ( b )
Daniele Tittarelli  ( as )
Max Ionata  ( ts )
Pietro Lussu  ( p )
Walter Paoli  ( ds )
< guest >
Javier Girotto  ( bs )



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2009/08/26 | Comment (6) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Mark Zubek / Twentytwodollarfishlunch

   ↑  2009/06/11 (木)  カテゴリー: bass
mark zubek



50年代~60年代のジャズ・ジャイアントの音源を繰り返し慈しみながら聴くのもイイけれけど、一方ではやっぱり常に現在進行形のジャズも聴いていたいと思う気持ちも抑えきれず足繁く輸入盤店に通ってはいるのだが、最近は未知のジャズ形態に遭遇する機会がほとんどなくなった。今後もドラスティックにジャズが進化することはおそらくないだろう。そんな絶望にも似た諦めを抱きつつ今日もDiskunionの扉を開けちゃうわけで、それなら買わなきゃいいじゃん、と友人は言うけど、そう簡単に止められないのが猟盤生活。なぜなら中毒だから。要するに一種の病気ですから。

と云う訳で、過日、毎度のごとく茶水のDUに何か面白そうなブツはないものかとフラッと立ち寄ったのだが、その際、店内でかかっていたのがこれ、マーク・ズベク ( Mark Zubek , Toronto CA , 1974 ~ ) というベーシストのリーダー作。一瞬にし耳を奪われたこの作品、実に良いのだ。

芯の図太いベース・リフをバックに野性的で牽引力があるテナーとトランペットのソロが続く。程よくアングラ臭が漂っているのだがポップな感性も持っている。果たしてこのうねるテナーは誰なのか?切れ味鋭いトランペットは誰なんだ?カウンター脇にディスプレイされてあるジャケットにはサポート・ミュージシャンのクレジットがないので分からない。そこでこのCDを手にとって「これください」とだけ言えば済む事なのだけど、変なプライドがあるからその場では買えない悲しい性。とりあえずマーク・ズベクという名前だけ覚えて退散した。帰宅するや否や HMV で検索し、即注文。やっと昨日、 Criss Cross の新譜3枚と一緒に届いた。

リーダーのマーク・ズベクはトロンント生まれの35歳。地元の高校を卒業後すぐにバークレー音楽大学に進学。卒業後はニューヨークに進出し約10年間過ごした後、現在は地元トロントに戻りインディーズ作品をメインに手がけるミュージシャン兼プロデューサーとして活躍中である。

本作の中で彼はウッドベースを弾いていて一応ジャズをやってはいるのだが、もともとジャンルの枠を超えたワイド・レンジな活動をしているアーティストで、ロック、ヒップホップ、R&B 、アンビエント音楽などの分野で主にプロデュース業で名を馳せているようである。さらには Discovery Channel、Coca Cola、Doukin' Donuts、Sun Microsystems などの企業のジングルを制作したりと、非常に活動が多岐にわたっており、彼の経歴を見る限りジャズよりもむしろロック・プロデューサー業が本業のようだ。

ロックに軸足を置いて活動しているとは云え、ウイントン・マルサリス、ベニー・カーター、ジャック・ディジョネット、ブライアン・ブレイドらなど、超一流ジャズ・ミュージシャンとの共演歴があり、本作でも今ニューヨークで最先端を突き進むテナー奏者と言ってもよいシーマス・ブレイクとマーク・ターナーを招聘し、それだけでもヨダレもんなのに、アヴィシャイ・コーエンまで連れてきてしまうあたり、本国ではミュージシャン仲間からは高い評価を得ているのでしょう。

全10曲で、1曲を除きすべてマークのオリジナル曲。メンバーは前述したようにシーマス・ブレイク、マーク・ターナー ( 指の事故前の録音 ) 、アビシャイ・コーエンによる夢の3管フロント・ライン+ケビン・ズベクのドラム+マーク・ズベクのベース&ヴォーカルというクインテット編成。ドラムのケビン・ズベク ( Kevin Zubek , 1972~ ) はマークの兄貴だ。

4ビートは殆どなく、9/8拍子、7/8拍子などの変拍子ものやセロニアス・モンクを意識した曲、中近東音楽(トルコ)に触発されて書かれた曲などあり飽きないが、10曲中3曲はマークのボーカルをフューチャーした完全なロックのなのでやや好き嫌いが分かれるかもしれない。しかもボーカルと云っても普通の声じゃなく、エフェクターを通したラジオヴォイス風の歪んだ声だし。ファズ+エコライザーか? と思ったらジャケにしっかり拡声器が映っていた。

マークのベースは図太く野性的でちょうどオマール・アヴィタル ( Omer Avital ) を彷彿とさせるタイプだ。曲によってはコンプ+ワウワウ処理したような音も出している。決して先進的でも技巧派ではないし、メインストリームの舞台で活躍できるほどの汎用性、柔軟性を持ち合わせているようには見えない。がしかし、強力に Groove し、バンドを牽引する迫力あるベースラインは傾聴に値するはずだ。

マーク・ターナーのテナーもひらひら天高く舞い上がったかと思うと、突然、不規則な楕円を描きながら螺旋回転し急降下し、同じく不安的なコークスクリュー軌道で旋回するシーマスのテナーと幾重にも交差し、見事な二重らせん構造を形成していく。

さらにそこにアヴィシャイの男臭いトランペットが絡んでくる。こんな破壊的なアヴィシャイを聴いたのは 『 The Trumpet Player 』 以来、久し振りだ。


Mark Zubek / Twentytwodollarfishlunch   星1つ星1つ星1つ星1つ
2009  FSNT  323

Mark Zubek  ( b, vo )
Avishai Cohen  ( tp )
Mark Turner  ( ts )
Seamus Blake  ( ts )
Kevin Zubek  ( ds )

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Vit Svec / Keporkak  ( ReEntry )

   ↑  2009/05/12 (火)  カテゴリー: bass
vic svec 

《 Follow The Whales 》


過日、TBSテレビの特番 『 地球創世ミステリー~プラネット・ブルー海と大地の鼓動を聴け』 を見た。

俳優の伊藤英明が “地球が凝縮した島” ハワイを訪ね,ハワイを通じて海と地球の神秘を探るプログラムだったが,特に僕が興味を引かれたのがマッコウクジラの生態について。

マッコウクジラって,3000mの深海まで素潜りできるなんて知らなかった。どうやってそんな深くまで潜れるかというと,あの突き出た巨大な頭の中に脳油というオイルが貯蔵されていて,海水で冷やして固体化して比重を高めると沈み,血液を流し込み温めて脳油を液化させると比重が低下し浮力を生むといった仕掛けらしい。

なるほどとは思うが,どうしてそんな深海の水圧に哺乳類の体が耐えられるのかは謎だ。最先端の潜水艦(おそらくボディーはチタン合金かな)でさえ,1000m程までしか潜水できないというのに。よく映像で見る海面に浮上して潮吹きしているクジラしか知らないが,生涯の大部分を深海で過すマッコウクジラって実に神秘的な生き物だ。

では、どうしてそんな深海にわざわざ潜水するかというと,深海イカを捕食するためだそうだ。で,ここからが凄いのだが,深海には小さなイカ類だけではなくて,ダイオウイカという20m近くもある巨大イカが生息していて,それをも捕食してしまうらしい。この捕食の様子を番組ではCGで見せてくれるのだが,これはもうSFムービーの世界。まさにマッコウクジラ対ダイオウイカ。大映の怪獣映画の世界だ。このダイオウイカってまだ生きたままの捕獲がされていないらしく,打上げられたマッコウクジラの胃からダイオウイカの体の一部がみつかったり,またマッコウクジラの体に巨大な吸盤の跡や爪の残骸が残っていてることから“マッコウクジラ対ダイオウイカ”が深海で繰り広げられているのだろうと考えられているらしい。

宇宙も神秘に満ち溢れているが,深海の世界もそれに負けず劣らず神秘的なわけだね。

ということで,今日はVit Svec Trio (ヴィト・スヴェック・トリオ)の『 Keporkak 』(2004 ARTA)を引っぱり出して聴いてる。

リーダーのヴィット・スヴェックはピアニストではなくベーシストで、 ピアニストはMatej Benko(マチェイ・ベンコ)という人。このトリオは既にチェコでは有名らしいが,僕が聴くのはこれが初めて。ミロスラフ・ヴィトウスを生んだチェコということでヴィットもメチャクチャ巧い。でもやっぱり,何処までも透き通るクリアな音を紡ぎ出すピアノのマチェイに魅かれてしまうのは致しかたない。陰鬱で陰影感漂う楽曲とラテン・タッチの楽曲,時にクラシックの手法を織り交ぜ,東欧らしい格調高いアルバムに仕上がっている。

ラテン調の清々しい旋律美を持ったM-3《 Dreamer 》。これ,何処かで聴いたことのあるようななつかし思いを沸き立たせる名曲だ。続くM-4 《 Smilla 》も哀愁旋律てんこ盛りの美曲。ペトルチアーニ風でもある。

で,前おきが長くなったが,ここからが本題。

このアルバム,一通り聴くと誰しもM-1 《 Follow The Whales 》が印象に残ると思う。《 クジラを追いかけて 》 という訳で,イントロからクジラの鳴き声(ベースのアルコ)が聴こえてきて,ピアノが低音部でFを執拗に重々しく鳴らすテーマ。途中でバロック調に曲調が変わったかと思うと,次いでベースソロからドラムソロ。ピアノとベースのDのコンディミ(Combination of diminished scale )らしい不安げなユニゾン・リフをバックに,ドラムが炸裂ソロをとり,最後に不気味にクジラの鳴き声。

《 クジラを追いかけて 》 ならもっと雄大で優しいメロディーが欲しいところだが、どうもオドロオドロシイ雰囲気を漂させていて、以前からどうも曲名と曲調が合わない気がしていた。しかし,この 『 地球創世ミステリー~』 を見て,ハッとした。この曲は “マッコウクジラ対ダイオウイカ” の曲なんだと。そういうつもりでもう一度目を閉じて聴いてみると,ほら,激しい戦いの情景が眼前に広がってこないか?

Vit Svec Trio / Keporkak   星1つ星1つ星1つ星1つ
2004  ARTA

Matej Benko  ( p )
Vit Svec  ( b )
Jan Linhart  ( ds )


Animal Face-Off - Sperm Whale vs Giant Squid

( 2006年9月19日分を加筆・修正したものです。)

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Niels-Henning Orsted Pedersen / The Eternal Traveller

   ↑  2009/02/21 (土)  カテゴリー: bass

Niels Pedersen eternal traveller

 
ペデルセンって、純然たる4ビートより、こんなトラディショナルを弾いた時のほうが、滋味溢れていて好きです。


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Lars Danielsson / Libera Me

   ↑  2009/02/11 (水)  カテゴリー: bass

lars danielsson libera me

東京の空は、いまだに鉛色の雲に覆われ、はっきりしない天気です。
幾分、憂鬱な気分です。
原因は天気のことだけではありません。
昨夜から左肋骨弓下から左側腹部にかけてのズキズキする痛みが続いているのです。
我慢できない痛みではないし、夜も眠れたのですが、
年齢も40歳代半ばになるといろいろ怖い病気のことも頭をよぎり、
少しずつ憂鬱な気分に傾いてきます。

先々週には人間ドックで血液検査から胃内視鏡、腹部CTなどを受けて問題なかったし、
大腸内視鏡も一昨年受けたばかりなので、
まあ、悪性腫瘍ってことはないとは思うのですが、、、
それでも、憩室炎かな~、尿管結石かな~、
それとも10年前に罹患した結核が再発したのかな~、と、考えは良からぬ方へ。

そんな訳で、せっかくの休日も一人寂しく、病床に伏しております。

こんなフィジカル的にもメンタル的にも衰弱している時に聴きたい音楽なんてそう多くはなくて、
僕の場合は、ウルフ・ワケニウスの『 Forever You 』やラーシュ・ヤンソンの『 Hope 』とか、
それからこのラーシュ・ダニエルソンの『 Libera Me 』あたりと大体きまってきちゃうのですね。

それにしても、ラーシュのコレ、イイねぇ。

本作はスウェーデンのベテラン・ベーシスト、ラーシュ・ダニエルソン ( b. 1958 ) 2004 の作品。Danish Radio Orchestra のシンフォニーが全編を優雅に包み込む大作です。

クラシックでもない。フォークでもない。ジャズでもない。そんな安易なカテゴライズでは掴みきれない、ジャンルを超えた領域で創造されたラーシュの音世界がそこにはあります。

北欧独特の透明感を基調としながら、柔らかく、静かに、情景を描いていくかのような旋律。
とっても自然で、無垢で、シンプルで、そこには全く作為的な要素が感じられません。
だから、心の奥底のどこまでも深くへ浸透していく。

たぶん、こんな音楽、Crap 扱いするジャズ・ファンも多いと思うけど、僕にとっては愛すべき好盤です。





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2009/02/11 | Comment (18) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Terje Gewelt / Oslo

   ↑  2009/01/17 (土)  カテゴリー: bass
terje gewelt oslo

ノルウェーのジャズレーベルResonant Music の主催者でもあるベーシストTerje Gewelt ( テリエ・ゲヴェルト ) は、Christian Jcob (クリスチャン・ジェイコブ)とのデュオ三部作や、Dag Arnesen ( ダグ・アーネセン ) との共演盤を通じて、日本でもコアなファンの間で非常に人気があります。そんな彼の最新作が発売になりました。今回は何と Enrico Pieranunzi ( エンリコ・ピエラヌンツィ ) を迎えてのトリオ作品と云うのですから驚きです。二人の接点って今までなかったのではと思ったら、92年にオスロで共演していたようですね。その時エンリコの演奏に惚れこんだテリエは、以来、ずっと共演盤の制作を熱望していたようですが、今回その夢がついにかなったという訳です。ドラムはラーシュ・ヤンソンやボボ・ステイン、それから西山瞳さんともやっているスウェーデン人 Anders Kjellberg ( アンダーシュ・シュルベリ ) です。

正直なところ、一聴しただけでは心に響かなかったのですが、数回聴いているうちにその静かな抒情性に徐々に魅かれていきました。一発で打ちのめされなかった理由は、エンリコの抑制的な演奏スタイルのためです。もし、ブラインド・ホールド・テストをしたら、ピアノを言い当てられる人って少ないんじゃないでしょうか。それくらい本作でのエンリコは優しく静かな表情を湛えています。ちょうど2006年に Cam Jazz に吹き込んだ 『 Ballads 』 に近似した印象を受けます。テリエの音楽的意匠を理解した上でのこのような演奏スタイルの調整をすかさず行うあたりは、やはりエンリコの天才的演奏能力の成せる技でしょう。

全12曲で、M-9 からM-11 は3人共作の組曲編成になっています。そのほかはテリエのオリジナルが6曲、エンリコのオリジナルが3曲。耳に馴染みやすいキャッチーなメロディーを持つ楽曲や、派手なリフで引っ張っていくようなアレンジものが少ない分、何回聴いても聴き飽きない適度の分かりにくさがあります。本来の持ち味であるノーブル性を抑えた優しい表情のエンリコと、厳寒の地ノルウェーで培われた温かいメロディー感覚を持つテリエの音楽性が巧く混ざり合い、ジェイコブとの ≪ 奇跡の三部作 ≫ に迫る高い完成度を持った作品に仕上がっています。

また、エンリコに対する “ 洗練された欧州リリシズムの極致 ”という一般的なイメージとはまた違った彼の内面が表出した作品としても面白いのではないでしょうか。僕は結構、適度に力が抜けた優しいエンリコが好きです。    

ただ一言だけ苦言を呈するなら、楽曲の流れからすると、フリー・フォームに近い組曲は収録する必要がなかったように思うのですが、いかがでしょうか。



Terje Gewelt  /  Oslo      星1つ星1つ星1つ星1つ
2009  Resonant Music  RM21-2
Terje Gewelt   ( b )
Enrico Pieranunzi   ( p )
Anders Kjellberg   ( ds )




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2009/01/17 | Comment (18) | Trackback (5) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Avishai Cohen Trio / Gently Disturbed

   ↑  2008/12/22 (月)  カテゴリー: bass

avishai cohen gently2 

イスラエル出身で、現在はNYで活躍中のベーシスト、Avishai Cohen ( アヴィシャイ・コーエン ) の通算9作目となる最新作。個人的には1997年に結成されたチック・コリアの“ Origin ”でのアヴィシャイの演奏を聴いてすっかり魅了されてしまい、以来、ずっと彼をフォローしてきた。今回の最新作もダウンビート誌の2009年1月号に掲載されている『 Best CDs of 2008 』 で4つ星選定され、現地米国でもすでに確固たる評価を得ているベーシストである。

以前は、ウード( oud : 琵琶に似た弦楽器)を多用して、楽曲自体も中東音階を取り入れたりと、セファルディとしてのアイデンティティを色濃く打ち出した曲作りをしていたが、前作あたりからウードも使わなくなり、だいぶ民族音楽臭さは薄らいできた。今回は初のピアノ・トリオ編成ということで、よりいっそう中東色は希薄になってきており、より幅広いジャズ・ファンにアピールできる作風に仕上がっているようだ。ドラムは以前から活動を共にしている Mark Guilliana ( マーク・ジュリアーナ )で不変だが、ピアノは Sam Barsh ( サム・バーシュ )から、若干21歳のイスラエル人、Shai Maestro ( シャイ・マエストロ!! 凄い名前だぁ~ )に交代している。全11曲で、そのうち9曲がアヴィシャイのオリジナル、2曲が Traditional 。

中東色は希薄になれど、メランコリックで哀愁美漂うメロディーと超難解な変拍子は健在。カッコよくて痺れるけど何だか悲しくなってくるような楽曲が目白押しだ。この変拍子―しかも1曲の中で目まぐるしく拍子が変化する―の、何とも表現しがたい “ 覚醒 ” 感って、一体どこから来るのだろう。私たちの脳内にあらじめプリセットされている2拍子、3拍子、4拍子、8拍子…などの定型的なビート感を、変拍子は心地よく撹乱してくれているようだ。つまり、脳を裏切り苛める快感みたいなものが変拍子の魅力なのではないだろうか。そして、この変拍子の快感は、ロバート・フィリップを聴くときに感じる快感と同質なものだ。

以前、ビル・ブラフォードがこんなことを言っていた。「かっこいい曲を作りたければ、変拍子を使えばいいんだよ。」と。確かにそうなのだが、アヴィシャイの場合はそうしたギミックとしての変拍子利用ではなく、イスラエルの伝統音楽の中から自然に獲得していったスタイルとしての変拍子の多用だと思われる。そもそも変拍子はその元を辿れば、アラブ系民族音楽に由来するわけだし。

≪ Shai Maestro : Short Biography ≫
1987年イスラエル生まれ。5歳でクラシック・ピアノを始め、8歳の時にオスカー・ピーターソンを聴いてジャズに開眼したマエストロは、テルアビブ郊外のギバタイムにあるテルマ・イェリン国立芸術高等学校に進学し、ジャズとクラシックを学んだ。在学中に IAJE ( 注1 ) 主催の演奏会にビッグバンドの一員として招かれて米国ツアーも経験したが、その際、バークリー音楽院の奨学金オーデションを受験し、4年間の学費全額免除という名誉で合格している。近年はジミー・グリーンやアントニオ・ハートらなどの著名なミュージシャンとの共演を通じてメディアからも注目されはじめている。ここ2年ぐらいは、アヴィシャイ・コーエンのトリオで活動しており、『 Gently Disturbed 』と、今年8月にイスラエルで発売された『 Sensitive Hours 』で彼のピアノを聴くことができる。

1 : IAJE ( International Association for Jazz Education, 国際ジャズ教育者協会)。ジャズの教育に携わる人々で構成された教育振興団体。約40年の歴史を持ち、アメリカ最大のジャズに関する団体である。しかし、20084月に、500,000ドルの負債をかかえて破産。執行役員によるずさんな経営管理と資金の使い込みなどがその理由のようだ。すでにウェブサイト( http://www.iaje.org/ は閉鎖されているのでリンクできず。

星1つ星1つ星1つ星1つ 

Chutzpan - Avishai Cohen Trio

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2008/12/22 | Comment (8) | Trackback (2) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Dave Holland / Pass It On

   ↑  2008/12/21 (日)  カテゴリー: bass
dave holland pass it on

前作『 Critical Mass 』 から2年あまりの歳月を経て発表された Dave Holland ( デイヴ・ホランド )の最新作。彼自身のインディペンデント・レーベル、 Dare2 Records からの3枚目の作品に当たる。

過去の Dare2 作品同様カヴァー・アートは、自らも演奏活動を行うジャズ・マニアでもあるスイス人グラフィック・デザイナー、Niklaus Troxler ( ニクラウス・トロックスラー )の手によるもの。

今回はフロントラインにTp、Tb、As の3管がそろったセクステット編成であり、しかも今まで自己のグループには加えたことのないピアノが加わっている。そのピアノがマルグリュー・ミラーというのもちょっと意外。デイヴ・ホランド・バンドのコアとなるRobin Eubanks ( ロビン・ユーバンクス )は温存したものの、その他のメンバーは一新されている。

トランペットは criss cross に多くの作品を残す Alex Sipiagin ( アレックス・シピアギン )、アルトは Antonio Hart ( アントニオ・ハート )。二人ともDHBB のメンバーとして活動を共にしてきた気心知れた盟友である。ドラムも Nate Smith ( ネイト・スミス )から Eric Harland ( エリック・ハーランド )に代わっている。デイヴ・ホランドは90年代以降、カルテット、クインテット、そしてビッグ・バンドと3つのバンドを運営してきたし、それ以前はソロ、デュオ、トリオなどの編成でも活動していたが、今回のようなセクステットは初めてではないだろうか。

全9曲で、そのうち6曲が過去の作品からの再演である。何曲かオリジナル・ヴァージョンと聴き比べてみたが、だいぶ印象が変わっている曲も多い。たとえば M-5 ≪ Equality ≫ は、『 Dream of The Elders 』 ( 1995 ECM )に収められていた曲だが、マルグリュー・ミラーのモーダルなピアノが加わったことにより、調和指向型の洗練された楽曲に生まれ変わっている。

ホランド独特の変態リズム&コード進行をもった楽曲のテイストはもちろん感じられるのだが、やはり、アントニオ・ハートやマルグリュー・ミラーらの存在感が大きく、従来のM-BASE理論に根差した特有の スタイルを踏襲しながらも、ややメインストリーム寄りの作風に仕上がっている。これはこれで聴き心地はよい。

それにしても、ホランドの楽曲というのは、ふつうならメカニカルで無機質になりがちな変拍子をふんだんに使っているにも拘わらず、何故か牧歌的で伝統的な印象を受けるのは、とっても不思議だ。

星1つ星1つ星1つ星1つ



Double Vision - Dave Holland

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2008/12/21 | Comment (7) | Trackback (2) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Dominique Di Piazza / Princess Sita

   ↑  2008/06/20 (金)  カテゴリー: bass
Dominique Di Piazza 『 Princess Sita 』 

「この人はいったいどうやって弾いているのだろう」と不思議でならないベーシストっているもので、たとえば、ブライアン・ブロンバーグ、ヴィクター・ウッテン、マーク・キングなど、いまでこそネット上に動画がアップされているので、簡単に演奏する姿を見ることができるようになったが、映像のなかった昔は不思議でしかたなかった。今日取り上げるイタリア人ベーシスト、Dominique Di Piazza ドミニク・ディ・ピアッツァもそんな一人だ。

初めて聴いたのは92年に発売されたジョン・マクラフリンの作品『 Que Alegria 』 であった。マクラフリンは、カイ・エクハルトやヨナス・エルボーグなど、馬鹿テク・ベーシストばかりを起用することで有名だ。ドミニクもそんな馬鹿テク・ベーシスト集団の一人だ。そんな彼の初リーダー作品がイタリアの新興レーベル Picanto Records から発売になった。

まずは簡単に彼の経歴を書き記しておく。(彼のOfficial Web Site より)

シチリアで生まれたドミニク(出生日不明)は、ジプシーであった継父に育てられた。そのことが後の音楽性に影響を与えたようだ。彼ははじめギターとベースの両方を学んだが、79年にジャコ・パストリアスを聴いたことがきっかけとなり、ベーシストとしての道を選ぶこととなった。

独学でベースを学んでいったが、独自のプレイスタイルを確立するのに、それほど時間はかからなかった。80年代初めには、彼のドレードマークである親指、人差し指、中指の3フィンガーによる独特の奏法は完成していた。さらにはペダルスチールギター用のピックを指にはめることでその右手の奏法を進化させ、誰にも真似できない独特の音色、フレーズを確立させていった。

彼はまた5弦ベースも導入していった。当時はlow B 弦を加えた5弦ベースが一般的であったが、彼は high C 弦を加えたものを使用し、世界のトップ・ベーシストに影響を与えた。彼のこのようなベースの新たな奏法は、ベース界に波紋を起こし、米国ならびに欧州の数多くのアーティストが、彼の奏法を採用していった。たとえば米国のMatthew Garrison マシュー・ギャリソン(あのジミー・ギャリソンの息子)やフランスの Hadrian Feraud アドリアン・フェローらは、ドミニクのフォロアーである。

87年にはギル・エバンス・ビッグ・バンドのヨーロッパ・ツアーに参加。89年のJean-Pierre Como ジャン・ピエール・コモの『 Padre 』(邦題:父に捧ぐ)への参加を経て、91年にはあのジョン・マクラフリン、トリロク・グルドゥらとトリオを結成し、300回以上の世界公演を挙行した。そのトリオで録音されたのが『 Que Alegria 』である。2000年にはビレリー・ラグレーン、デニス・チェンバースらと“ Front Page ”を結成しツアーを行い、アルバム『 Front Page 』を制作した。

近年の活動としては、今年1月に発売になったアントニオ・ファラオのCAM JAZZからの作品『 Woman’s Perfume 』への参加がある。現在は再び“ John McLaughlin & The 4th Dimension ”の一員としてツアーに参加しているようだ。

さて、この新作はNelson Veras ネルソン・ヴェラス ( g )、Manhu Roche マヌ・ロシュ ( ds ) とのギター・トリオ編成。ヴァラスは若き天才ギタリストとしてフランスではかなり有名。拙ブログでもクリストフ・ウォーレムやアルド・ロマーノのところで取り上げているが、その完成されたテクニックはもちろんのこと、その成熟した歌心に抜群のセンスをみる。

全12曲で、うち8曲がドミニクのオリジナル曲。全体に静かで優雅な曲調が多く、印象的なメロディーも少なく、油断をしているとBGMになってしまいそう。ナイロン弦ギターのヴェラスの音と、high C弦を多用した高音部でのドミニクの音が意外に似ていて、しかもフレーズも近似しているので、今どっちが弾いているのか、迷ってしまうこともある。つまりは、はっきり言って、面白くない。もう少し派手な作品を期待していたが調子抜けした感じだ。もちろんヴェラスもドミニクも滅茶苦茶うまいのだが、ドミニクの独特のロマンチックな曲は、心に訴える力強さに欠けるような気がするし、ギター・トリオという編成にも越え難い限界をみる。なかなかソングライティング・センスの優れたベーシストっていないものだ。やはり、彼のようなテクニックを持ったベーシストは、彼を超える馬鹿テク大物アーティストと共演して初めて真価が発揮されるのではないだろうか。

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2008/06/20 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Matt Penman 『 Catch of The Day 』

   ↑  2008/01/16 (水)  カテゴリー: bass
Matt Penman  『 Catch of The Day 』
現代のニューヨーク・コンテンポラリー系のベーシストの俊英、Matt Penman (マット・ペンマン)の『 Unquiet 』(2002 FSNT)に続く第二弾。まず目を惹くのはその贅沢なメンバーで、シーマス・ブレイク(ts)、アーロン・パークス(p)、エリック・ハーランド(ds)というカルテットは、おそらく今、ニューヨークで考え得る最強の布陣ではないでしょうか。

マット・ペイマンという人は、格別巧いという印象はないながらも、コンテンポラリーなジャズの基盤となる、高度な学理に裏付けられたライン、それでいて感覚的でつかみどころのない浮遊するリズムを創造できるアーティストです。この手のベーシストの先駆けは、おそらくブラッド・メルドーやジョシュア・レッドマンらと90年代の早い時期から活動を共にしてきたラリー・グレナディアあたりだと思っていますが、それ以外では、スコット・コリーやリューベン・ロジャーズ、それからダグ・ワイスなども同系統のニュー・タイプのベーシストではないでしょうか。そんな中ではマット・ペイマンは地味な存在かと思いますが、最近ではSFJAZZ Collective などのレギュラーを務めるなど、徐々にその存在感をアピールする機会が増えてきました。

ところで、最近俄かに注目を集めるようになってきたマット・ペイマンって、いつ頃から活動しているのでしょうか。個人的には彼の存在を知ったのは2000年のクリス・チークの作品『 Vine 』だったと記憶していますが。そこでall about jazzから彼のbiographyを覗いてみますと、1973年にニュージーーランドで生まれた彼は、90年代に母国で数多くの賞や奨学金を得て、さらにバークリー奨学金をも獲得し95年に渡米。その後もニューヨークを中心にライブ活動を行ってきたようです。その間にはジョシュア・レッドマン、ブラッド・メルドー、マイケル・ブレッカー、ブライアン・ブレイド、ゲイリー・バーツらなどとも共演を果たしています。近年はワールドワイドな活動も活発にこなすようになり、ニルス・ワグナム(昨年のNils Wogram and The NDR Bigband 『 Portrait of a Band 』にも参加していましたよね)、ウォルフガング・ムースビル、ケニー・ワーナーらのバンドにも参加しています。

さて、内容ですが、全8曲で全てペンマンのオリジナル曲。トータル50分とやや短めの録音時間です。全体に幾分内省的でダークなミデュアム~スローの曲が中心で、どの曲も夢幻的、幻想的なサウンドを持っており、柔らかに静かに情景を描いていくような楽曲が並んでいます。例えるなら、静なるコンテンポラリー・ジャズといった趣で、新鮮さという意味ではやや物足りない感じも否めませんが、落ち着きのなる丁寧に作り込まれた音世界は一聴に値する出来栄えだと思います。

本作でのシーマス・ブレイクの演奏にしても、彼の一連のCriss Cross盤、例えば 『 The Bloomdaddies 』や『 Echonomics 』などで彼のファンになった人には、少々欲求不満が残る内容かもしれません。時にジョー・ロバーノの如く豪快にウネウネと、時にコルトレーンの如く狂気するブレイクは影を潜め、ひたすら緻密で静的な音世界を演出していきます。

いかにもコンテンポラリーな魅力に満ち溢れた快作ではありますが、彼の自己抑制が効き過ぎたのか、あるいはこれが彼の描くサウンド・スケープなのか、次作ではもう少し元気のいいところを見せて欲しいと切に願います。

Matt Penman 『 Catch of The Day 』 2007 FSNT 303
Matt Penman (b)
Seamus Blake (ts&ss)
Aaron Parks (p)
Eric Harland (ds)

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2008/01/16 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Avishai Cohen / As Is ... Live At The Blue Note

   ↑  2007/06/30 (土)  カテゴリー: bass
Avishai Cohen  『 As Is ... Live At The Blue Note 』
1997年、チック・コリアの“ Origin ”のレギュラーー・ベーシストに抜擢されたことで俄然、ニューヨーク・ジャズ・シーンの表舞台に登場してきたアヴィシャイ・コーエン。本作は彼の通算8作目となる新作です。

今回は初のライブ録音でしかもDVDとセットの二枚組。メンバーはピアノのサム・バーシュとドラムスのマーク・ジュリアーナという、いつものレギュラー・トリオを軸に、今回はサックスのジミー・グリーンとトランペットのディエゴ・ウルコフとが客演しています。客演組の二人は以前からコーエンの作品に参加しているので気心知れた仲間です。今回の作品は何と言っても映像付きというのが嬉しいですね。個人的にはアヴィシャイのビジュアルは既に観ているので、ジミー・グリーンの動画が観られることに興奮を覚えます。

さて、CDの方は全7曲。最後の ≪ Caravan ≫ 以外は全て旧作に収められていた彼のオリジナル曲。コーエン・ファンには馴染みの美曲揃いです。惜しむらくは彼の最高に美しいオリジナル曲≪ Madrid ≫ と≪ Calm ≫が収められていなかったこと。この2曲が含まれば彼のベスト盤と呼べる選曲になったはずです。

一方、DVDの方は全7曲で、その内4曲はCDに収められた曲と同曲、同バージョン。3曲にジミー・グリーンが参加していますが、ディエゴ・ウルコフは出てきません。

彼のオリジナル曲はどれも中近東のエスニック風味を程よく取り入れた哀愁美曲ぞろいです。確かな演奏技術に支えられた即興と、ユダヤ人(セファルディー)のDNAを色濃く受け継ぐ作曲能力が、非常に高い次元でバランスよく保たれている点が彼の魅力ではないでしょうか。人種の壁を越えて聴く者の胸にグッと迫るメロディー。やはり音楽の核になるのはメロディーなのだと再認識させられる楽曲が並んでいます。中近東的な旋律や様式を取り入れて創作されたジャズの作品は数あれど、ミステリアスでメランコリックな中東音階をこれほどまでに違和感なくジャズに浸透させることに成功したミュージシャンを僕は他に知りません。

ひとたびその作曲力から離れて彼の演奏力に目を向けても、非常に素晴らしいものがあります。リズムが驚異的に正確でどのどの音域でも音質に安定感があり、アドリブの組み立て方もうまく、フレーズも非常によく歌い、そしてタッチも強靭。そんな非の打ちどころがないそのテクニックを目の当たりにすると、人種的にも、楽器的にも成功することの極めて困難なニューヨーク・ジャズ・シーンで、確固たる地位を築きあげたのにも納得がいきます。

彼と同じくチック・コリアの門下生のジョン・パティトゥーチがあらゆる方面から引っ張りだこで人気を得ているのに対して、コーエンはほとんどスタジオ系の仕事はしていないようです。あまりにも個性が強すぎてサポート・ミュージシャンとして起用しにくいのだと思われますが、やはり個人的には金稼ぎにばかり走らず、自分の理想とするジャズを窮めていってもらいたいと切に願います。

本作は本当によいです。しかも安いです(HMV マルチバイキャンペーン価格 2592円)。自信を持って強くお薦めできる作品です。

Avishai Cohen  『 As Is ... Live At The Blue Note 』 2007年 Half Note Records 4531
Avishai Cohen  (b)
Sam Barsh  (kb melodica)
Mark Guilliana  (ds)
Diego Urcola  (tp)
Jimmy Greene  (ss)

コーエンの全8作品中、僕が大好きな3枚をセレクトしてみました。


Avishai Cohen  『 Continuo 』  2006年 Nocturne Records  NTCD393
レギュラー・ピアノ・トリオに Oud (ウード)奏者のエイモス・ホフマンが4曲で参加。ホフマンはコーエンとはイスラエル時代からの旧友で、ギターも弾きますがここではウードに専念しています。冒頭からコーエンのアルコとホフマンの中東音階(音階名はマカーム・ナワサルかな? C D Eb F# G Ab B C  )によるソロから始まりますが、驚かないように。意外に民族音楽臭さは希薄です(と感じているのは僕だけかも)。名曲 ≪ Calm ≫ 収録。


Avishai Cohen  『 Continuo 』  1998年 Strech Records  SCD-9015-2
Strech に吹き込んだ3作品、『 Continuo 』 、『 Devotion 』、『 Color 』 は僕の中ではごちゃまぜになっていて、どれも同系色の風合いを持った作品かな、って思いますが、その中でも僕が彼のファンになったきっかけでもある美曲≪ Madlid ≫が収められているこのデビュー作により愛着を感じます。


Avishai Cohen + The International Vamp Band  『 Unity 』  2001年 Strech Records  UCCJ-3009
コーエンがピアニストとしてのデビューを飾った作品という話題性はともかく、コーエンの理想郷が明確に提示された完成度の高い作品かと、思います。3管フロントを配したコーエン流のジャズメッセンジャーズ解釈がここに表現されています。

Avishai Cohen  『 At Home 』 についてはこちらに書いています。よろしければご覧ください。



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2007/06/30 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Pippo Matino 『 Essential Team 』

   ↑  2007/06/26 (火)  カテゴリー: bass
Pippo Matino  『 Essential Team 』
イタリア人ベーシスト,ピッポ・マティーノの13年ぶりの新作です。1993年の初リーダー作『 Bassa Tensione 』(前項あり)は,彼が尊敬して止まないジャコへの傾倒ぶりがかなり明確に表出した,ベース・ファン必聴の隠れ名盤でした。「ジャコそっくり大賞」という企画があれば,間違いなく優勝であろうと思われるその分かりやすい模倣は,「そこまで真似るか~」と苦笑いしてしまう程でした。

今でもたまに棚から取り出しては懐かし思いで聴くことがありますが,すっかり僕の中では過去の人になっていました。この13年の間,フラビオ・ボルトロの『 Road Runner 』(1999 Blue Note)で耳にした意外,まったく消息不明でしたので,突然の新作リリースが飛び込んできて、吃驚仰天しました。

で,慌てて彼のOffical Websiteを覗いてみたのですが,共演者リストにはファブリツィオ・ボッソをはじめ,数多くの有名ミュージシャンが名を連ねていて,イタリア・ジャズ界に確固たる足跡を築き上げていたことを初めて知りました。

さて,今回の新作は“ Essential Team ”という彼がリーダーをつとめるプロジェクト・チームでの録音です。ドラムのクラウディオ・ロマーノ,サックスのジュリオ・マティーノ,トロンボーンのロベルト・スキアーノからなるバンドで,これにゲストでステファノ・ディ・バティスタらが参加しています。ちなみにバティスタが客演しているのは全13曲中3曲だけです。

最初に聴いたときは,兎に角,エフェクター類を多用してベース音を弄くりすぎている,という印象を強く感じました。そして、デジパック仕様の中ジャケを広げてみると,そこには自慢げに何やら2個のエフェクターを持つマティーノの姿が。よく見るとそのエフェクターは AKAI の Head Rush と(たぶん) UniBass でした。

AKAI の Head Rush といえは,目立ちたがりのベースマン御用達のサンプラーです。須藤満をはじめ,結構使用しているプロも多いAKAIの傑作エフェクターですが,マティーノはこの Head Rush のループ機能を使用し,サウンド・オン・サウンドでリフを作成,その上に乗ってソロをとる手法で録音しています。早い話が,昔,ジャコがジョニ・ミッチェルの『 Shadows and Light 』でラックに納められた2台のデジタル・ディレイをいじりながらベース・ソロを演奏したでしょ。あれと同じことを今では小さなこの Head Rush 1台でできてしまうという優れものなわけです。

UniBass の方はピッチシフターですが,4度あるいは5度の音を重ねて出力できる,いわばパワーコード機能も付いているのが売りです。さらにディストーションも付いているので,完全にベースでギターのようなサウンドが出せるので,ライブなどではギターリスト並みに目立つことも可能な便利なエフェクターです(あまり使い過ぎるとギターリストに嫌われます)。

そんなわけで,あまりにも便利な機械が簡単に手に入るものだから,節操ないベーシスト達はこれらを駆使してギタリストの存在意義をも揺るがす派手なパフォーマンスをしでかす訳で,僕はあまり感心しないのですが。ベースはあくまで「生音」で勝負しなきゃね。

閑話休題。マティーノの巧さは更に磨きがかかり,マスターであるジャコを軽く飛び越え,完全に自分のスタイルを築き上げているのですが,あまりにも作り込み過ぎて,昔のようなスリル感はなくなり,よく出来ているけどやや退屈な作品になってしまっています。(でも決して出来が悪いわけではありません。)

それにしても,ザビヌル作曲の《 Night Passage 》では、原曲を遥かに凌ぐ独創的なリフをそれも超高速で繰り広げており,ジャコの遺伝子を色濃く受け継ぎながらも,さらに進化し,前人未到の領域に登りつめよとする強い精神を感じずにはいられません。

時々,ジャコが今でも生きていたらどんなジャズを演奏していたのだろ~,と想像することがあります。もしかすると,こんなジャズもジャコの発展型のひとつとして存在していた可能性があったのかもしれません。

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2007/06/26 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Stanley Clarke / Night School

   ↑  2007/05/28 (月)  カテゴリー: bass
stanley clarke

「 絵の出るディスク 」として80年代に登場し,一世風靡したレーザー・ディスクの製造が,今年の三月末をもって完全に終了したようです。正直なところ,とっくの昔に生産終了していたと思っていたので,ちょっと意外な感じがします。最後にプレスされたタイトルが川中美幸の「 金沢の雨 」だったということで,もしかするとカラオケ用のディスクだったのかもしれません。

僕の家にも大量のLDがほとんど聴かれることなく保管されています。プレーヤーもパイオニアのCLD-919という往年の名機を所有していますが,最近は滅多に電源をいれることもなくなりました。すでにLDでしか発売されていないレアな音源はDVD-Rに焼いて保存していますので,今後LDプレーヤーを使用することなどないのですがね~。

安ければ2千円ぐらいで買えてしまう最近の音楽DVDと違って,当時のLDは1万円近くする高価なディスクだったので,捨てるのもったいないし,中古業者に出してもおそらく何十円にしかならないだろうから,今だに処分することができないでいます。でも,そのうちディスク面の化学変化が進行し読み取れなくなっちゃうんだろうな~。(すでにそんな不良LDが出始めています。)

昨日買ってきたこのスタンリー・クラークのDVDも2300円程ですから,ホント,安くなったものです。僕が買ったのは輸入盤ですが,6月20日発売の国内盤でも3500円ですから,ほとんどCDと変わらぬ値段ですね。

で,本作の話になりますが,これが凄い,凄すぎのライブ映像なんですよ~。もう,ベーシスト必見! 絶対買いです。

本作は,スタンリー・クラークが,若手音楽家を支援する奨学金制度「 Stanley Clarke Scholarship Fund 」の活動の一環として2002年(なぜか古い)のロサンゼルスでのライブを収録したものです。

いくつかのフォーマットで入れ替わり立ち替わり多彩な演奏が披露されているのですが,そんな中でも白眉なのは,スタンリー・クラークを含め総勢11人のベーシストがステージに同時に立って,それぞれ順番にソロをとる《 School Days 》。そのベーシスト達が凄い。というか信じられない集合体です。中には知らないベーシストもいますが,主だったところでは,ロック界からレッチリのフリー,ビリー・シーンなど。ジャズとロックのどちらにも顔を出す馬鹿テク親父のスチュアート・ハム。マニアックなところでバーニー・ブンネルや僕の大好きなジミー・ジョンソン。そして今やベース界のトップに君臨するブライアン・ブロンバーグとマーカス・ミラーなどなど。

こんな凄腕ベースマンがなんと小さなステージに横一線に並んで次々にソロを弾いていくんですよ。想像しただけでニンマリしちゃうでしょ。ソロをとるブロンバーグの後ろでリズムを刻むマーカス・ミラーなんて映像,おそらく前代未聞のレア映像だと思いますよ。

で,当然こんなに超絶技巧のベーシストが並ぶと,誰が一番巧いか,という品定めをしたくなるのですが,やっぱり強者達の中でもブロンバーグが頭ひとつ抜きん出ているように思われます。他のベーシストが普通にベースの音でソロをとっているのに対してブロンバーグは,ブリッジに(おそらく) Roland の MIDI ピックアップ( GK-B3 かな?)を付けて,ヘビメタ風のソロをとって観衆の度肝を抜いていました。

意外だったのが,レッチリのステージでは全裸になって大暴れするフリーが,終始ステージの左端で地味な演奏をしていたのが面白かった。ジャズ界の馬鹿テクベースマンに囲まれ,やや萎縮していたのでしょうか。

それ以外では,スティービー・ワンダーの《 Giant Step 》(あまりうまくはないけど,ちゃんとアドリブしています。)や,ポリスのスチュアート・コープランドとシーラ・E のツインドラムなど,楽しい映像満載です。

信じられないくらい巧いヴァイオリニスト,カレン・ブリッジス( karen briggs )などの新発見もあり,最後まで全く飽きさせないライブでした。

それにしても6曲目にレニー・ホワイト,パトリース・ラッシェン,ベニー・モーピン,ウォレス・ルーニーらの《 Why Wait 》という曲がクレジットされているのに,実際にはそんな映像が納められていないのです。結構,これが楽しみだったのに残念。Why!

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2007/05/28 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ |